ターン50 鉄砲水と天王星の主
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をどうにか動かしてウラヌスの落下地点まで歩く。1分と歩かないうちに、その体に触れる事さえできるような位置まで近づいた。
「せめて静かに眠ってもらいたいね……あれ?」
その位置まで来て、初めて気が付いた。ウラヌスの前面は特に傷もないのだが、ちょうどデュエル中には見えなかった背面にかなり大きな、しかも深い傷がついている。精霊の体がどれほど頑丈な物かは知らないが、僕らの世界の生き物を基準に考えればこれはどう見ても致命傷だ。しかもこの傷、古いものじゃない。かなり新しい、まだやられてから1日と経っていないような新しい傷だ。
「一体……」
誰が、と言おうとした言葉は続かなかった。ウラヌスの傷から見覚えのあるオレンジの光、デュエルエナジーが猛烈な勢いで外に出て行っている。何かに導かれるように流れ出ていくそのエネルギーの行きつく先は、僕らのデュエルをずっと観戦していたオレンジ色の人型。ウラヌスの持つ膨大なエネルギーをすっかり吸い取ったそいつは、スキップでもせんばかりの勢いで校舎へ向けて音もなく進んでいく。
「ま、待てっ!」
この傷の形に見覚えがある事に、その時ようやく思い至った。いまだ倒れたままのレイちゃんの腕にも、まさにこのウラヌスの傷を縮小したような跡が付いていたんだ。ウラヌスとレイちゃんが同じ奴にやられたとしたら、その相手は恐らくあの得体のしれないあいつだろう。もしかしたらウラヌスはアカデミアを襲おうとしたのではなく、自身に傷を負わせた奴を追ってここまで来たのかもしれない。となると僕は戦う必要もない怪我人を相手に勝負を挑み、それで勝って1人で悦に入っていたことになる。
「クソッ!」
とにかく奴を追いかけなくちゃ……慌てて走り出そうとするも、無視できないレベルで溜まり続けたデスデュエルによる疲労のせいで足がもつれ、無様に顔から転んでしまう。それでもどうにか立ち上がろうとしたところ、背後から誰かが僕を呼ぶ声が聞こえた気がした。
振り返ると、ウラヌスの瞳が動いてこちらをはっきりと見つめている。あの怪我に加え今のデュエルエナジー流出で、先ほどとは比べ物にならないほど弱っているのが一目でわかる。ほとんど生気の抜けたその目が、僕に何かを訴えようとしていた。
『マスター……』
「うん、大丈夫。僕にもわかるよ、チャクチャルさん」
何かを喋ってきたわけではないが、何が言いたいのかはなんとなく理解できた。半ば無意識のうちに立ち上がって手を伸ばすと、ウラヌスの目が最後にひときわ強い光を放つ。砂に戻って地面と同化しかかっていたウラヌスのデュエルディスクから1枚のカードが解き放たれると、その強大な念動力に支えられて僕の手のひらにふわりと乗った。そのカードに記された名前を、そっと読み上げる。
「The despai
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