ターン50 鉄砲水と天王星の主
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「やっほー十代。こちら清明、異常ないよ」
目の前に広がるのは、ただひたすらに砂、砂、砂。今僕がいるのはアカデミアのてっぺん、ここに登って周りを見回し、目の前に無限に広がるこの砂漠でモンスターのおかしな動きがあればすぐさま十代達に連絡を飛ばすのが今回の僕の役目だ。今はまだ昼だから野生のサンドモスやらダンジョン・ワームやらはよほどの変わり者でもない限り地中に潜んでいるはずだけど、用心するに越したことはない。
こつ、こつ、と誰かの足音がしたので振り返ると、そこには久方ぶりに見る顔がパンと牛乳、それに紙皿に乗ったゼリー状の料理を持って歩いてきた。
「よう。さっきトメさんに怒られたんだ、そんなに計算ばっかりやってたら倒れちゃうから、少し外の空気でも吸って休憩してきなさい、ついでに清明ちゃんに今日の昼食を届けてやってくれってな」
「や、三沢。まあ座ってきなよ」
「ああ、俺もまだ飯を食ってないからな。隣、失礼するぞ」
そう言って腰を下ろし、自分の分らしい僕と同じメニューをぱくつく三沢。考えてみれば不思議なものだ、ひっそりと休学して研究の道に進み始めた三沢と、よりにもよってこんな地球ですらないような場所で再開するだなんて。僕は直接見たわけではないけれど、事故に巻き込まれてこの世界に飛ばされてからというものたった1人でひたすらさまよい続けて半ば行き倒れ状態になったところを偶然こっちに来てしまったアカデミアで確保したらしい。三沢にも三沢なりに色々とドラマがあったんだろうけど、悲しいことに今の僕らにそれを気にしている余裕はなく、そのあたりの詳しい話はいまだ宙ぶらりんのままだ。
「……レイちゃん、どんな感じかな」
「ここに来る前に一応見舞いだけはしてみたが……まだ目覚めそうにはないな。十代達、ちゃんとやってくれるといいが……」
そう、これこそが三沢の話を気にしている余裕がない理由。昨夜の校舎内、廊下で何者かに襲われて怪我を負ったレイちゃんが、いまだ衰弱状態が続いているのだ。日本にいるならいざ知らず、食料すらまともに確保できるか怪しいこの世界でちゃんとした医療設備が整っているはずもなく、頼みの綱は三沢が歩き続けている最中に見たという潜水艦の残骸のみ。正直それにしたってどう考えても怪しい代物だけど、じっとしていても貴重な物資が日々減っていくだけだ。籠城が役に立つのは、援軍が期待できるときだけである。
「十代、そっちはどう?変わったものでもある?」
『いや、まだ何も見えないな』
手にしたトランシーバーに声をかけると、向こうから十代のくぐもった声が聞こえてくる。電波塔なんて気の利いたものがあるわけないこの土地で、唯一通信が期待できるのがこの、倉庫に備品として置いてあったトランシーバーだ。本当なら僕もあちら側の探索組に入りたかった
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