宇宙編
月決戦編
第36話 暁月
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ーは…?」
ギラ・ドーガに並び鎮座するハイザック。
どうやら無事帰還できたようだ。
「お疲れさん…大丈夫か?」
あまりに暗い顔を心配したのか、整備長が声をかける。
「一旦休め。作戦は順調だ」
ろくに返事もせず自室に向かった。
今はもう、何も考えられない。
とにかく一刻も早く終わらせたい。
この悪夢の様な戦争を。
ふと胸にしまった懐中時計が気になった。
「返しそびれたな…」
返せるはずもない。
そう思い机の上に置かれた時計に目をやる。
標準時3時02分。
どうりで眠いわけだな。
懐中時計をベッドに括り付け、部屋を出た。
「隊長」
部屋の前には、メアリーの小さな顔があった。
「よかった…無事だったんだな」
「はい…隊長こそ、ご無事で」
心配そうにこちらを見ている彼女は、それほど疲れているようにも見えないが、明るいわけでもない。
まぁそれはいつものことだが。
「はは、下半身はぶっ飛ばされたけどな。なんとか」
メアリーが顔を俯かせた。
一瞬意味がわからなかったが、それが自分の事を見ているとわかると、変な羞恥心が体を襲った。
「え、は?俺じゃねーよ!バウのことだ??」
「え。あ、私…」
なんとなく気まずい二人はMSデッキへと向かった。
ろくに談笑する場所すら少ない艦内では、パイロットは自機が気になるのが性だ。
「バウ…あれじゃあもう戦えませんね」
「ああ…」
残った上半身は傷だらけだ。
もちろんバウの。
「大尉の隊が心配だ…」
まだ帰還してないというし、とっくに戻ってきてもいい頃だ。
「隊長は、アイラ少尉ばっかですね」
「なんだ、急に」
あまりメアリーがプライベートのことを聞くことは少ない。大体そういう話は、マルロがしていたから…
「多少感じますよ…そういう気持ち」
「え?」
「隊長のことを慕ってもいますし、尊敬しています。隊長も、私のこと気にかけてくれてるのはわかります」
「ああ…」
「なのになんでか、隊長からは…隊長のことは、特別になんだと勘違いしてしまって…」
「なぁ、メアリー」
不器用な彼女の言葉を遮って、自分の中に隠れた言葉を吐き出した。
「地球、行ったことあるか?」
「え?いや、ないです」
「俺もだ。いつか、本物の海で泳いだり、本物の青空を眺めてみたい」
「…」
「けど、だからって宇宙が嫌いなわけじゃない。こんなに広い宇宙に、自分という存在を感じられたときは、何よりも充実した時間を過ごせる」
「はい、私もです。この宇宙が好きです」
メアリーはすっとMSデッキの向こうの宇宙を見た。
「だろ?人ってすごいよな、あんなに離れた星から同じ命を繋いでるんだから」
「えぇ。向こうからも、同じようにこっちを見てる人がいるんでしょうね」
「そうだな。きっと」
な
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