第六話 仮面舞踏会だよミューゼル退治 そのA
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殺そうと懸命の努力を続ける俺の前で、家宰様は少年の純粋な心に心動かされたという表情でしばらく沈黙していた。
「援助は申し出てみよう。受け入れるかはセバスティアン次第だが」
俺とブルーノに微笑みかけた家宰様の口から出てきた言葉は、俺の計画の崩壊を意味するものだった。
俺の馬鹿。
敵を援助するのは馬鹿のすることだぞ、情にほだされて敵を助ければ、生きのびた敵はいつかお前を殺しにやってくる…。
家宰様の温かい微笑みとブルーノのしょうがないなという笑顔を前に、俺は感情を制御することに失敗した自分の弱さを責め続けた。
『失望の痛みと激情に』うつむいたままの俺に、家宰様は温かく言葉をかけてくれた。
「『大帝の騎士』だけでなく新進の帝国騎士にも、模範とすべき人物は多くいる。フォン・ワイツやフォン・シェーンコップは君のいいお手本になるだろう。私などより遥かにね」
「フォン・ワイツはリヒテンラーデ閣下の秘書官だ。フォン・シェーンコップはベーネミュンデ館の執事」
家宰様の言葉も、ブルーノの解説も救いにならなかったのはもちろん言うまでもない。
そいつら結局、ラインハルトに殺されてるじゃないか。
保険を、第二計画に落とした当初の人生計画を発動すべきだろうか…。
後ろ向きの考えが頭をよぎる。
「ありがとうございます、家宰様」
『痛みの癒えぬ』俺はブルーノに倣ってそう言うのがやっとだった。
『青春だねえ、うんうん』
窓の外に酒瓶からウイスキーをラッパ飲みするタキシード姿の悪魔を見つけても、怒りの視線を投げつける気力もなかった。
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