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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
外伝 あいつはそういう奴だから
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ての迷いと戸惑いが消えた。
 直後、フレイヤがあらん限りの力を込めた掌底で吹き飛ばされた。

「阿婆擦れが……くそ神がッ!!俺を、俺の意志を支配しようとしたなッ!!俺を支配する奴は誰であっても許さない。俺の一生(いのち)を支配する奴は賢者であろうが聖人であろうが王であろうが、たとえ神であろうが――絶対に殺すッ!!」

 余りにも純粋で、狂気を帯びるほどに強大で、微塵の揺らぎも許さなぬほどに堅牢な意志。

 誰の元に下ることをも許さぬ、孤高の覇気。

「俺を支配する権利を握るのは、俺だけだッ!!誰にも邪魔させない……この世界の誰にも、俺が俺であることだけは誰にもッ!!」

 そこから先のことは、よく覚えていない。
 ただ、吹き飛んだフレイヤを傷付けぬよう抱きすくめて仲間(ファミリア)に預け、許されざる罪を犯した小僧を蹂躙したのは覚えている。途中、「殺してはだめ」というフレイヤの命令だけは聞き逃さなかった。

 頭に血が上っていたのだろう、と後から思った。
 そして、目の前の少年が放つ底なしの殺意がそうさせたのだろう、とも。
 薙ぎ倒しても薙ぎ倒しても立ち上がる不屈の少年に、オッタルはただただ「むきになって」戦い続けた。振るった剣の圧で周囲を噴き飛ばし、建物を崩壊させ、大地を蹴り割って圧倒した。少年は肉が抉れ、折れた骨が肺に突き刺さり、夥しい血液をぶちまけて尚、微塵も臆することなくオッタルに真正面から殺意をぶつけてきた。

 そして――それは、自分でも隙だと認識できないほどの刹那。

 オッタルの振るった剣に『認識できない何か』をして攻撃を凌いだオーネストの右腕が、オッタルの視界の上を通り抜けた。


 ――ブチチッ、と、神経と血管、皮膚組織が抉るように引き千切られる音がした。


 視界に入る鮮血。人生で一度も経験したことがない、頭から噴出する自分の流血。
 痛みは感じた。人生でほぼ経験したことがない痛みだった。だが、オッタルはその痛みをどうでもいいものと思った。今、目の前にいる一人の戦士が口にする言葉を聞き逃してはならないと思った。

 死んでいないのが不思議に思えるほどの出血と生々しい傷跡。あらぬ方向に折れ曲がった左足と骨が剥き出しになった左腕。そんな傷など何事もなかったようにどこまでも冷めた言葉で、オーネストは手に持ったものを地面に投げ捨てた。


「どうした、猪……耳が千切れているようだが?」

「――――…………」


 フレイヤに向けられたものと打って変わって、それに何の感慨も抱いていないかのような声だった。目的地へ向かう途中に、通りすがりと肩がぶつかったから会釈した。たった今起きた現象をその程度の出来事だと認識しているかのような声だった。

「お前は…………そうか、猛者
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