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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百九十四話 財務官僚の悩み
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は歴史的な価値も有るからな、解体には反対する声が強い』
なるほど、帝国は五百年続いた。新無憂宮は五百年の間帝国の中心に有った訳だ。解体に反対する声が強いのは当然だろうな。
「それで、如何するんだ?」
『そのまま博物館として一般市民に公開してはどうかという意見が出ている。映画会社にロケ地として利用させるとかね。その収益で現状のまま維持管理させる』
「なるほど、面白い考えだな。映画の撮影に使いたがる人間は多いだろう。黒真珠の間とかな」
トリューニヒトが“そうだろう、そうだろう”と上機嫌に頷いている。
『発案者は私だ。政府が遷都すればオーディンは活気を失う。しかし此処には新無憂宮だけじゃなく政府関係の建物が色々と有る。観光都市として再生出来るんじゃないか、そう思うんだ。宮内省は渋っているが財務省は諸手を上げて賛成している』
「なんだ、自慢話か」
『まあそうだ』
二人で声を上げて笑った。暫らく笑っていなかったような気がする。気持ちが良かった。
『少しずつにせよ周囲の信頼を得て行きたいと思っている。そうなる事で色々と情報も入って来るからね』
「苦労をかけるな、トリューニヒト」
トリューニヒトが肩を竦める仕草を見せた。
『心配無い。私はこの状況を楽しんでいるよ。それにもう直ぐシトレ元帥、ヤン提督にも会える』
「そうだな」
『君こそ無理はするなよ、少しは息を抜け』
「頑張れとは言わないのか?」
『言わなくても頑張るだろう?』
思わず苦笑してしまった。
「そういう性分なんだ」
『気を付けろよ、ヴァレンシュタイン元帥も君の事を心配している。真面目なのは良いが自分を追い込み過ぎるのではないかとね』
「そうか」
ヴァレンシュタインが……。
『冷徹では有るが意外に面倒見が良いところが有る』
「意外? そんな事を言って良いのか?」
『訂正、非常にだ』
また二人で笑った。
『今は私がパイプ役になっているがその内直接話すのも良いだろう。敵なら手強いが味方なら頼もしい相手だ』
「味方か……」
トリューニヒトが頷いた。もう笑ってはいない。
『味方にするんだ、レベロ。敵対では無く協力しながら民主共和制の存続を目指す』
「そうだな」
トリューニヒトは帝国で信頼を得ようと戦っている。彼一人に押し付けるわけにはいかないな。帝国と協力体制を強化する。その事で帝国の信頼を得る。例え同盟市民から裏切り者と蔑まれようとも……。
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