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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百九十四話 財務官僚の悩み
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今この時から政府職員だ。官舎に居ても何の不都合も無い。レベロには話してある、アイランズ国防委員長にもね」
「なるほど」
どうやら私がフェザーンに行く事は既定事実だったようだ。上手く操られたような気がしたが怒りは感じなかった。
宇宙統一暦 元年 3月 15日 ハイネセン 最高評議会ビル ジョアン・レベロ
『如何かね、そちらの状況は』
「悪くない。こちらが提出した国債の要請を帝国が無条件で受け入れてくれたからね、少しずつだが経済状況は上向きになりつつある」
『未だ実際には何もしていないだろう?』
「アナウンス効果という奴だな。帝国は同盟を締め付けようとはしていない、同盟市民は安心したというわけだ。御蔭で親帝国派と呼ばれる人間が増えている」
スクリーンに映るトリューニヒトが笑い声を上げた。
帝国がこちらの提案を無条件で受け入れた事には正直驚いた。エルスハイマーの口添えも有ったが帝国政府にも同盟を必要以上に抑え付けようという意思は無いのだろう。勿論そこには同盟が三十年後の統一に向けて協力するという前提が有るが……。
『では少しは君も遣り易くなったか?』
「そうでもない、同盟市民の私に対する評価は帝国の顔色を窺う裏切り者さ」
『倒閣運動でも起きているのか?』
トリューニヒトが心配そうな表情を見せた。
「残念だがそんなものが起きるほど最高評議会議長の椅子は魅力が有るわけでは無い。経済恐慌でも起こらない限り私の地位は当分安泰だな」
『そうか』
少し寂しそうな表情をトリューニヒトが見せた。そんな顔をするな、トリューニヒト。政権が安泰なのは良い事なのだ。
「そちらは如何なんだ、トリューニヒト」
トリューニヒトが笑みを見せた。
『忙しいよ、こちらは。憲法制定、それに遷都の準備も有るからね』
「そうか」
『遷都で一番忙しい思いをしているのは宮内省だな。皇帝の住居を如何するのかで大騒ぎだ。それに今の新無憂宮を如何するのかという問題も有る』
「なるほど」
個人の引っ越しでも大変なのに遷都ともなれば……。ちょっと想像がつかんな。
「それで、新無憂宮は如何するのかね?」
『当初は離宮として維持するというのが宮内省の考えだったんだがね、維持費が馬鹿にならないんだ。フェザーンに遷都すればオーディンの離宮など五十年に一度使えば良い方だろう。膨大な費用を費やしてまで維持する必要が有るのか疑問だ。だが売りに出す事も難しい。宮内省は頭を抱えているよ、相談を受けた財務省は逃げた』
「その判断は正しいだろう。私が財務尚書ならやはり逃げる」
トリューニヒトが笑い出した。
『私も同感だ。宮内省内部には一部を離宮として残し他は解体するという案も出ている。しかしその解体する費用も馬鹿にならないし新無憂宮
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