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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百九十四話 財務官僚の悩み
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や善意だけで帝国が動く事は無い。彼らは極めて冷徹だ。同盟の要求を認めたのはそこに帝国にとっても利が有るからだ。
「その辺りを理解している人間は大使になろうとはしない。厳しい任務になるからな。だが大使に必要とされている人間はそれを理解している人間だ」
「それで閣下が?」
「ああ、レベロに頼まれてね、引き受ける事にした」
閣下が笑みを浮かべた。
「ヤン、如何かね、君も一緒に行かないか。私を助けて欲しいんだが」
「助ける……」
「私のスタッフとしてフェザーンに一緒に行って欲しいんだ」
「……」
「先程君は同盟軍は自分を必要としていないと言ったね。そうかもしれない、だがフェザーンでは君が必要だ。少なくとも私は君を必要としている」
私を必要としている?
「閣下が今日此処にいらしたのは」
シトレ前本部長が笑い声を上げた。
「そうだ、君を誘いに来た」
「……」
「ヤン、帝国では中央は専制君主制だが地方自治には民主共和制を導入しても良いのではないかという意見が有るらしい」
「地方自治で民主共和制を……」
シトレ前本部長が頷いた。なるほど、地方自治なら政治思想による対立は小さい。そして影響も限定される。
「その声は決して小さくない。トリューニヒト前議長からレベロ議長に報せがあった」
トリューニヒト前議長から……。
「民主共和制を途絶えさせてはならない。例え地方自治でも市民の声を政治に反映させる、その思想を残すべきだ。違うかね?」
「……」
「そのためには我々は帝国の信頼を勝ち取らなければならない。地方自治に民主共和制を導入しても問題無いと思わせなければならないんだ。手伝ってくれないか、皆が君を待っている」
「皆? それは如何いう意味です?」
問い掛けると前本部長が頷いた。
「帝国ではトリューニヒト前議長が民主共和制を残すために戦っている。同盟ではレベロ、ホアンだ。我々は国家を存続させるための戦いには負けたかもしれない。だが民主共和制を残すための戦いはまだ終わっていない」
シトレ前本部長が私を見ている。強い視線だ、前本部長にとって戦いはまだ終わっていないのだ。いや、前本部長だけではない、トリューニヒト、レベロ、ホアン、彼らは未だ諦めていない。民主共和政国家では無く民主共和制を残すための戦い……。
「分かりました、何処まで御役に立てるか分かりませんが微力を尽くします」
「有難う、宜しく頼むよ」
「フェザーンへは何時までに?」
「六月には向こうに居る必要が有る。ハイネセンは遅くとも四月の終わりには出るつもりだ」
となると二カ月は何処かで過ごす必要が有る……。
「住居の事かね?」
「ええ」
「このまま四月まで此処に居れば良い」
「しかし」
前本部長が声を上げて笑った。
「君は
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