Side Story
少女怪盗と仮面の神父 20
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
リッテの周囲に居る人間だ。
海賊はそれを不気味なくらい理解していた。
あの青年が何者であろうと、ミートリッテが一緒に行動している時点で、傷害を加える対象に選ばれてしまう。
すべてはシャムロックを利用し、苦しんでる姿を見て楽しむ為に。
(でも、飛んできた斧が実際に狙ったのは私。たまたま避けられただけで、生きていようが、死んでいようが、どっちでも良いって意図が見え隠れする一撃だった。それが私の思い込みだとしても、海賊と『奴ら』じゃあまりに印象が違いすぎる)
なら……仮に、海賊が『奴ら』ではないとしたら?
『ミートリッテの命を狙う『奴ら』は『誰』?』
ミートリッテが知る限り、村に害を及ぼす集団は海賊のみ。
青年の口振りでも、害意がありそうなのは『奴ら』だけ。
自警団と軍人と警備隊が警戒してる集団も、おそらくは一つだけだ。
状況と軍人達が現れた時期は、海賊こそが敵であると物語っている。
しかし。
「あの人もヴェルディッヒも、元を辿れば村の入口で聴いた会話の中でも、誰一人、『海賊』とは言ってないんだよね……」
『獲物と見れば何者にでも容赦なく喰らいつく、野生の猛獣と同じだ』
バーデルの軍人が声を荒げて主張した危険な存在。
略奪だなんだと不穏な言葉を連発され、勝手に海賊の話だと解釈したが。
その解釈こそが誤りで。
青年とバーデルの軍人、共に口にした『奴ら』が、同じ存在を示すなら。
(村の騒動に、海賊は関係ない。バーデルの軍人達が追いかけてきたのは、ある意味、海賊よりも危険な集団。村には今、二つの危険が潜んでる?)
にわかには信じられない可能性。
とはいえ、これならハウィス達の突然すぎる行動、ミートリッテを狙って飛んできた斧や、遠目には襲撃された痕跡がない穏やかな村の全景など、諸々の違和感もそれなりに納得できた。
村人に危険な集団の情報を伏せた自警団の判断も、少々意味が変わる。
「そういえばヴェルディッヒも、奴らの頭がとにかく現実的で危険と結果を冷静に秤へ乗せられる型だから、とかなんとか言ってたっけ。うわ、嫌だ。私個人なら問題なしですか!? 大迷惑なっ! こっちにも都合があんのよ、都合がっ…… ん?」
ちょっと『奴ら』の頭とやらを蹴り飛ばしたい衝動に駆られたが。
不意に、耳が小さな声を拾った。
なんだろうと息を潜め、その声に集中してみる。
「…………────っ!」
葉擦れの音にも掻き消されそうな声は、どうやら村の人達のものらしい。
村と現在地の間に横たわる森林を鬱陶しく思いつつジッと目を凝らせば、教会への坂道付近でうろうろしている黒点が複数。
くっ付いては離れ、移動し、また寄り集まってをくり返していた。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ