Side Story
少女怪盗と仮面の神父 20
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ごめんなさい、ハウィス……私は悪い娘だぁ」
そもそも火付け自体が悪い行いであり、何とかしてくれると信じてはいたものの、あと一歩で取り返しがつかない大惨事を招いていた自覚はある。
それでもアルスエルナ国内で収まる話であれば、まだ良かった。物とお金の価値が比較的安定してるから。
通貨の価値は、取引があるそれぞれの国で日々変動する。変動数値も近隣諸国の情勢次第で、どんな国でも日に依って振れ幅が大きかったり小さかったり、忙しいのは当たり前だ。
アルスエルナには取引上手が多いらしく、長年に渡って緩やかな波を描き続けているが、バーデルはほぼ毎日乱高下だと聞く。
賠償の為に通貨交換が必要なら、バーデル通貨の価値がアルスエルナ通貨の価値より高い時機を見極めなければ、差額分が大損失になってしまう。
この上、もしも支払いに期日を設定されたらと思うと……嫌な汗が止まらない。
「はぁ……貯めてたお金で間に合うかなぁ? すっからかんになるのは免れないとしても、一応確認はしとかなきゃだわ。自業自得とは言え、苦しいよぉ。くすん」
まぁ、事此処に至ってしまえば、後々の憂いに心を砕いてる場合じゃないのだが。
ズシッと重たい胃部不快感を堪え、膝に付着した小石や砂を手で払いつつ立ち上がる。
「さて……こうなるとやっぱり、私が前提を間違えてるって思うのが自然かな?」
一人きりの下山道中でも、青年が齎した情報と自分が持つ情報を摺り合わせていたが……どうしても解せない。
『青年が言う「奴ら」は、海賊達なのか?』
自分を狙う存在など、海賊達以外に心当たりは全然無い。
が、海賊達なら自分の命を奪おうとはしない。
少なくとも、あんな形では。
(幾ら気紛れな性分だって言っても、暗躍するシャムロックの正体を調べる労力と切り捨てる早さが割に合わないのよ。大体、あの斧が本当に海賊共の仕業なら、着地点は地面でも鎖でも私の腕でもない。あの人だ。当たるかどうかは別だけど)
シャムロックの弱点は周囲の人間だ。海賊達はそれを不気味なくらい理解していた。青年が「誰」かは知らなくても、ミートリッテが一緒に行動してる時点で傷害を加える対象に選ばれてしまう。
全てはシャムロックを利用し、苦しんでる姿を見て楽しむ為に。
(でも、斧が実際に狙ったのは私。たまたま避けられただけで、生きていようが死んでいようが、どっちでも良いって意図が見え隠れする一撃だった。思い込みだとしても、海賊共と「奴ら」の印象が違い過ぎる)
なら……仮に、海賊達が「奴ら」ではないとしたら?
『ミートリッテの命を狙う「奴ら」は「誰」?』
ミートリッテが知る限り、村に害を及ぼす集団は海賊達のみ。青年の口振りでも、害意がありそうなのは「奴ら」だけ。自警団と軍人
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