100話 慎重
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さえ込んでいる訳じゃない。数で、力で押さえ込んでいるんだ。そして、ゼシカと喋っているうちにかかる酷い頭痛と共に髪の毛がすっかり脱色して……戦闘には使い物にほぼならないけど、力だけは誰よりも強くなった私なら、こいつらを振り切ってみんなを開放できる。
ゼシカには、一旦気絶してもらえばいい。それから対処は考えよう。
「あぁ……とっても悲しいわ。貴女を生贄にするのが一番手っ取り早いのよ、アーノルドの娘……どうして貴女がここにいるのか、どうして……あの時死んでいなかったのか分からないけど、『あたしは貴女と過ごしたかったから!』」
ゼシカが杖を振り上げたその瞬間、私は跳んだ。
普段よりどうしてかツーテンポほど遅れて発動したメラゾーマは誰もいない大地を焦がし、その時には既に私の真空刃は主にシャドーを切り刻んで、残念ながら加減できなかったせいで一緒に切り刻まれたみんなに見慣れた緑の優しい光が降り注ぐ。
その温かい光は私にも。ククールのベホマラーだ。ゼシカが振り返るその前に、剣を捨てて私は、内蔵を破壊しないことだけ気をつけて、背後から掌底を放った。
途端、跳ね返ったのは激しい衝撃。効いていないわけじゃない、なのに悪意を持たずに放ったそれは、ゼシカに狙いの半分もダメージを与えなかったみたいだ。おかしい、スクルトでもこんなダメージカットの仕方をしないのに。《《まるで、最初から彼女にダメージを与えることが出来ないのを無理矢理看破したみたいだ》》。
すぐに私の意図を理解したエルトが槍を地面に突き刺し、棒幅跳びの要領で飛んできた。武器は不要だと踏んだのか、飛んできた手に握られていたのは槍じゃなくて、何故か、やわらかチーズ。
なんで、と思った瞬間にちっちゃなトーポが体の半分くらいあるサイズのチーズを丸呑みするなんていうあんまり見たくなかったぷにぷにほっぺの所業を見せつけつつ、なんか息を吐き出す。
……ルカニかな、ルカナンかな。予想外だけどトーポ、そんなことで来たんだね。これで聞きやすくして当てやすくって、ことかな。
トーポをポケットに戻したエルトはゼシカが唱えるラリホーマを無視して首を狙う。私は脳を揺らすことに専念する。……トロデーンの秘宝の杖で胸を定期的に貫かれそうになるのを避けつつ。
それってククールにもゼシカにも嫌な思い出しかない攻撃方法だと思うんだけどな!操ってる?黒幕は嫌な奴に違いない!
あぁそれにしても、なんて胸の踊らない戦闘なんだ。早く終われなんて思うの、なかなかないんだけど!
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