100話 慎重
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ゼシカ本来の優しさはどこに行ったんだろう。目の前のゼシカの体をした「何か」はなんなんだろう。頭の中ではドルマゲスと同じく目の前のゼシカが危険な存在だって理解してるのに、体は仲間に剣を向けたがらないんだ。
「悲しいわね……ここで貴女とお別れするのは。あたし、貴女の事、好きだったのよ。仲間じゃなくて、有力貴族の一人娘とせいぜい地方良家の娘の関係じゃなくて、同じ村の友人同士だったら良かったのにって」
「なんで、そんな事、言うの……」
どこからともなく現れた無数のシャドーたちにエルトもヤンガスもククールも拘束されてしまった。いや、ここにいるリブルアーチの街の人たちも、黒い犬も、みんな。動ける者はゼシカ……の姿をしたこいつしかいない。
でも、こいつは確かにゼシカなんだ。ゼシカの気配がして、ゼシカの茶色の髪をして、ゼシカの声で喋るんだ。心がゼシカじゃない、と言いきれたら操られていると済ませられるのに、心も半分ぐらいはゼシカだった。
闇に堕ちた、惹き付けられてしまった、魅入られた、乗っ取られた。どれが正しいんだろう。原因は、何だ?
剣を奪われたところで私は戦えなくなったりしない。それを理解しているのかシャドーたちに私を拘束させたというのにゼシカは武器すら取り上げようともせず、私の前に立っていた。悲しいなんて言いながら、悲しそうに、愉快そうに私にひたすら話しかけている。
私を殺すつもりなんだろうか。あぁゼシカなら出来るだろう、ゼシカは魔女だ、私の知る中で最も攻撃魔法に特化した、素晴らしい才能と魔力を持った、まだまだ伸びしろのある人だ。だから、彼女のメラゾーマがあれば私は骨も残らないかもね。良くて骨の欠片が残るぐらいだ。
「ふふふ、ねぇ、トウカ。知らないかもしれないけど教えてあげるわ、冥土へのお土産にね。知りもしない死んだ母親に伝えてくれると嬉しいわ」
「……」
「あたし、貴女の父親を知ったわ。その者を喚び戻さないと、いけないのよ。あたしのためにも、彼のためにも」
……私の父親?本当の父親も母親も私は知らない。なのになんでゼシカは母親が亡くなっていると言い切れる?父親を知っている?
ゼシカと私はこの旅で出会った。正真正銘、初対面だったし、私が養子であることを知っている人はいても私が捨て子だったのを知っている人はいない。
なら、つまり、それを言い切れるならば、目の前のゼシカの体の中でゼシカを「使っている」のは、……何か邪悪な存在だ。
あぁ、これで分かった、会ったことのない両親なんてどうでもいい。私は古き黒き血を引く「モノトリア」。どうでもいいんだ、今はただ、ゼシカがゼシカの意志で行動していないことさえ分かれば。
シャドーは魔法を使って私を押
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