第十四話 表に出てきてその九
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「何とかすれば」
「いいんだね」
「絶対に、優花に何も言われない様にするから」
決意もだ、優子は言った。
「任せてね」
「それじゃあね」
「姉さんが出来ないことがあっても」
「院長先生がなんだね」
「助けてくれるから」
「八条大学附属病院の」
「院長先生はそうしたことも出来る人だから」
優花を助けられる、その力を持っているというのだ。
「安心してね」
「力だね」
「そう、力はどうした時に使うものか」
「こうした時なのかな」
「そうよ、力は誰かの為に使うものよ」
自分の為だけに使うものではないというのだ。
「院長先生はそのことがわかっている人だから」
「僕にもなんだ」
「助けてくれるから」
それ故にというのだ。
「安心してね」
「うん、じゃあ」
「そういうことでね」
「僕一人だったら」
そうであった時のことをだ、優花は考えた。そのうえで深い顔になり言うのだった。
「どうしようもなかったけれど」
「一人ではね」
「姉さんがいてくれて龍馬がいてくれていて」
「院長先生もね」
「そうした人がいてくれたから」
「優花は今ここにいられるのよね」
「そうだよね、本当に一人だったら」
それこそと言うのだった。
「どうしようもなかったよ」
「そう、何度も言うけれど人は弱いのよ」
「一人だとね」
「何も出来ないものよ」
「立ち向かうこともだね」
「出来なかったりするわ、けれどね」
「人は一人じゃないね」
この現実をだ、優花は言った。
「そうだね」
「そうよ、一人ではね」
「ないよね」
「誰もね、どんなに辛い時でもね」
「人は一人じゃないんだね」
「そうよ」
弟にだ、優子は確かな声で答えた。
「誰もね」
「僕にしても」
「天涯孤独っていうけれど」
「そうした人はいないんだ」
「絶対に誰かが傍にいてくれているわ、けれどね」
「けれど?」
「そのことに気付くことが出来るのか」
そのことはというのだ。
「その人次第なのよ」
「気付くことが出来なかったら」
「そう、その人は孤独なのよ」
「天涯孤独なんだね」
「そうなるのよ」
「気付くか気付かないか」
優花は自分でも呟いて心に刻み込んだ、自分のその心に。
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