第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
六十話 百鬼夜荒 参
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アに言った言葉通り『嫌になる』……と口にするほどに。
虚空が吹き飛ばされた先で体勢を直し正面を向けば、勇義は悠然とした足取りで近づいていた。
「……ぶっ殺す前にアンタに聞いておく事があるんだけど――――萃香に何を吹き込んだ?」
勇義の問いは開戦する前に虚空が口にした言葉への疑念だ。
『そういえば、萃香から何も聞いてないのかい?僕としてはここで君達が百鬼丸を裏切ってくれる――――そんな劇的な展開を望んでいるんだけど』
あの時は唐突な事で気付かなかったが、今にして思えばこの男が何らかの甘言で萃香を唆した為、あんな無謀に走ったのでは?と疑っている――――否、確|
証《・》の無い確信と言ってもいい。
そして勇義のその推測は概ね的を射ており、虚空は、
「吹き込んだって…人聞きの悪い……いや合ってるのかな?
まぁ実を言うとあの子が強情でね、此処の場所を口割ってくれないものだからちょっと焚き付けて後を付けてきたんだよ――――ごめんね」
悪気も無さそうに笑顔のままそう返答し、
「でも君達の様子から察するにもしかして……百鬼丸に単独で挑んで捕まったのかな?そうだとしたら結構賢そうな子だと思ったのに何でそんな無茶をするのかね?」
やれやれ、と言うように頭を振った。
その言葉を受けた勇義は、先程までの荒々しい嵐の様な烈氣や殺気が嘘の様に霧散し沈黙していた。
だがそれは……その様は……喩えるならば、
大津波の前の引き潮の様であり――――
雪崩寸前の静寂の様であり――――
狂嵐が襲い来る直前の凪の様な――――
途轍もない大災厄を連想させられる、そんな不穏な静かさである。
そして…その災厄の火蓋は――――
「…………アンタを………殺す理由が一つの増えたねッ!!」
勇義のそんな火山の大噴火の如き叫びと共に切られた。
堰を切られた濁流が大地を飲み込み蹂躙する様に――――暴威の塊と化した勇儀が虚空へと躍りかかり、戦場に衝撃と爆音が轟渡る。
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