第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
六十話 百鬼夜荒 参
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の姉なんて知らないって言ってるでしょうがッ!!」
そんなルーミアの苛立ちと怒気が籠められた叫びが木霊した。
彼女が姉をどれ程慕っていたかは知らないが――――ルーミアにとってはその他の中の一に過ぎず、はっきり言うと知った事ではなかった。
誰かにとって大切なモノが、必ずしも他の誰かに価値あるモノだとは限らない。
二人の対立はそんな真理の縮図にも見えない事もなかった。
吹き飛ばされた先で体制を整え、ルーミアに向け再度突撃しようとした彼女に黒い影が躍り掛かる。
全身を闇色に染めた人型は、その手に持つ斧の様な獲物を上段から振り下ろすが、彼女は斧の腹を鎌で打ち襲撃者ごと払い飛ばした。
「操られてる間抜けがッ!邪魔するなッ!!」
襲撃してきた者に対し彼女のそんな罵声が響く中、
「なら、アンタもその仲間に入れてあげるわよッ!」
彼女の背後を取っていたルーミアが、そんな台詞と共に彼女の長い髪を鷲掴みにしながら足元の黒い湖へと叩きつける。
その闇色は彼女の身体に纏わり付き、彼女の身体は沼に沈む様に下へ下へと黒い泉へと飲まれて行く。
それははまるで冥府に墜ちた亡者が生前の命の暖かさを求めて生者を引き摺り込む様に似ていた。
「ルゥゥーミィィアァァァァァッ!」
沈み行くその身でルーミアを?もうと空に手を伸ばす彼女だが、その手は何も?み取る事無く怨嗟の叫びと共に黒く昏い闇へと沈んでいく。
彼女の断末魔に然程の興味も抱いていないルーミアの視線の先――――彼女が沈んだ湖面が揺らぎ、その数秒後…突如湖面が泡立ち間欠泉の如く黒い爆発を起こした。
その闇色の飛沫が晴れるとそこには闇に沈んだ彼女が立っている――しかしその身は足元に広がる湖と遜色ない黒で覆われており、先程までの烈氣はまるで感じさせない。
見渡せば彼女を始め先程襲いかかって来た影と同じ様な黒に染まった十数名の者達が、ルーミアを攻め立てようとしている妖怪達に襲い掛かっていた。
そして彼女も、まるでそれが使命だと云わんばかりに妖怪達に挑み掛かっていく。
『愚者の黒衣』
かつてルーミアが西の大陸で王気取りをしていた頃に好んで使っていた技である。
闇の沼に沈めその身を黒装束の様に覆う事により、その相手の身体の自由を奪い意のままに操る術技。
最大の特徴は身体の自由を奪うだけで意識は確りと残っている所であろう。
この技を使い同士討ちをさせ、その様を愉しんでいたのだ――――今のルーミアにしてみればあまり思い
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