Vivid編
第九話〜素直な気持ち〜
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ったのは下水道というそれなりに印象的な出会いをした女性がそこにいて、ライの姿を見て驚いた表情をしている。
「どうして、こんなところにライさんが……って、その傷!」
「う、ん?」
目の前の彼女が、恐らく先ほどの騒ぎで通報されて来た局員であり、魔力反応を頼りにここに来たことは想像に難くない。だが、いきなり取り乱し始めたことに疑問を感じたライは首を傾げながらそんな声を漏らした。
(あれ?地面が近い)
そして、首を傾げた為に少しだけ傾いた視界はそのまま地面をアップで写し始めた。
「……あぁ、血を流したから」
「何を呑気な!」
どこか他人事のように呟いたそのセリフは、頭上から浴びせられるように発せられた言葉でかき消される。
それと同時に少しの浮遊感と急に高くなる視界。それらを認識すると、ライはギンガに肩を貸されるようにして立たされた事を察した。
「ギンガ、血で汚れるよ?」
首と肩、そして弾丸をすり抜けるようにして避けたと“見せた”時に胴体に受けた傷は少なくない血液をライの体から奪っていたのだ。
そして、血の巡りが悪くなってきている頭と急に途切れた緊張感は正常な認識を奪うには十分すぎる要素であった。その為、ボンヤリとしてきた思考はライに頓珍漢な言葉を吐かせる。
「馬鹿なことを言わないでください!」
そしてそれはギンガを怒らせる。
無意識に近いライのその言葉。“自分への気遣いが一切ない”それが彼女をひどく苛立たせる。
「少し……眠い」
「治療しますから、その後にいくらでも寝てください!ブリッツキャリバー、今すぐなのはさんたちに――――え?」
すぐさま連絡を取ろうと待機形態のデバイスであるブリッツキャリバーを、空いている方の手で取り出す。
そして開かれそうになる通信はしかし、ライがその手を握り締めることで中断させられる。
「何を――――」
「皆には言わないでくれ……」
先ほどよりも小さい声であったが、確かな意志が宿った言葉にギンガは戸惑う。
だが、そのままズルリと手に着いた血で滑り、ダラリと垂れ下がった腕といつの間にか降りていたライの瞼を見た瞬間、その戸惑いを自身の思考から蹴飛ばすようにして弾き出す。
そして、再び連絡を取ろうと口を開こうとする。だが、その直前に必死で泣きそうな顔で訴えてくる先ほどのライの表情が脳裏を過ぎり、口から出かかる言葉を飲み込ませる。
「……〜〜〜〜ッ、もう!ブリッツキャリバー、お父さんに繋いで!」
すねて起こったような声を発すると、彼女は連絡先を変えつつ通信ウィンドウを開き、応急処置ができる場所へと足早に移動を開始した。
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