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SAO:アインクラッド
第37話 運命の鎌と火炎の巨剣
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「ユイ……まさか、お前……」

信じられないといった様子のカゲヤにユイは肯定するかのように、にこりと微笑むと2メートルほどの高さでぴたりと静止して右手をそっと宙に掲げた。

「だめっ!!逃げて!!逃げて、ユイちゃん!!」

アスナの絶叫をかき消すかのように、死神の大鎌が赤黒い光の帯を引いて容赦なくユイに振り下ろされた。
凶悪なまでに鋭い切っ先が、ユイの掌に触れる寸前鮮やかな紫色の障壁に阻まれ、轟音とともに鎌が弾き返された。
ユイの掌の前に浮かぶシステムタグをキリトたちは愕然と凝視した。
ただ1人、カゲヤだけはさも当然のようにその光景を見ていた。

【immortal Object】───不死存在

そこには確かにそう記されていた。
死神がまるで戸惑うかのように眼球をぐりぐりと動かす。
直後、ごうっ!!という響きと共に、ユイの右手を中心に紅蓮の炎が巻き起こる。
炎は一瞬広く拡散したあとすぐに凝縮し、みるみるうちに巨大な剣へと姿を変えていく。
ユイの右手に出現した巨剣は、優に彼女の身長を上回る長さを備えていた。
ユイはその自分の身の丈を超える剣を、ぶん、と一回転させ、わずかな躊躇いも見せず炎の軌道を描きながらユイは死神へと撃ちかかった。
炎の渦を身にまとったユイが轟音と共に空中を突進していく。
死神は自分より遥かに小さな少女を恐れるかのように鎌を前方に掲げ、防御の姿勢をとった。
ユイはそこに向かって真っ向から巨大な火焔剣を思い切り振り下ろした。
死神の鎌と衝突すると同時に、ごう、という爆音とともに死神の鎌が真っ二つに断ち割られ、巨剣が死神の顔の中央へと叩きつけられた。

「っ……!!」

瞬間、出現した大火球のあまりの勢いにキリトたちは思わず目を細めて腕で顔をかばった。
ユイが剣を一直線に振り下ろすと同時に火球が炸裂し、紅蓮の渦が死神の体を巻き込みながら通路の奥へと流れ込んでいった。
火炎のあまりの眩さに一瞬閉じてしまった目を開けると、そこにはもうボスの姿はなかった。
いたのは、俯いて立ち尽くすユイだけだった。
床に突き立った火焔剣が、出現した時と同じように炎を発しながら溶け崩れ、消滅した。
ようやく力の戻った体を起こし、キリトたちは剣で支えながらゆっくりと立ち上がる。

「ユイ……ちゃん……」

アスナが掠れた声で呼びかけると、少女は音もなく振り向いた。
小さな唇は微笑んでいたが、大きな漆黒の瞳にはいっぱいに涙が溜まっていた。
ユイはキリトたちを見上げたまま、静かに言った。

「パパ、ママ、ねぇね……ぜんぶ、思い出したよ……」



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