第八話 南西諸島攻略作戦(前編)
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、いっそう星々の輝きを引き立てていく。
「きれい・・・・。」
紀伊はほっと息をはいた。考えてみればここにきて以来あわただしく時が過ぎ去り、空を見上げる余裕も海をじっくりと眺める余裕もないほどだった。初めての航海、そして戦闘。艦隊に配属され、経験した挫折、そこからの必死の努力。そして今南西諸島攻略作戦の一員として出撃しようとしている。
練度はここに来てから最初とは段違いに向上したし、友達もたくさん増えた。だが、今もわからないことがある。いったい自分は何者なんだろう、と。
ふっとひそやかな夜風がよぎってきて紀伊の長い髪をなびかせた。
「私は・・・・いったい何者なんだろう・・・・。」
ふと浮かんだ思いを引きずり、胸に手を当てながらいつの間にか紀伊は埠頭にまで足を延ばしていた。ざあっと心地よい夜の穏やかな波が音を立てて埠頭に押し寄せ、引いていく。紀伊以外には誰もいなかった。
「空母でもない・・・・戦艦でもない・・・・・どの艦種にも属さない・・・・私は、いったい何者なんだろう・・・・・。」
紀伊はそっとしゃがみこみ、ほっそりした指先を波に浸した。夜だというのに波は自分の指先よりも暖かかった。その暖かさを感じながら紀伊は自分に問いかけた。
(ここに来てから皆にはとても優しくしてもらったのに、それでも何が不足だというの?姉妹艦なんていなくたって・・・・私は・・・・・。)
だが、すぐに次の思いが強く浮かんできた。
(でも・・・・私は自信がない。それは私が何者なのか、いったいどこに行こうとしているのかがわからないから・・・。自分が何者かわからない・・・・とても寂しいわ・・・・・。皆が話している新鋭艦娘が私の姉妹だとしたら・・・何か知ってるのかしら?その人に会えば私は変われるのかな・・・・。)
「何をしているの?」
不意に頭上から声が降ってきた。紀伊が体を起こした。
「あっ・・・・!」
瑞鶴がいつもの弓道衣姿で紀伊のそばに近寄ってきていた。そばに翔鶴と榛名もいる。
「少し夜風に当たりたくて・・・・。皆さんこそ、こんなところで何をしていらしたんですか?」
「え?あ〜〜・・・・ええとね、翔鶴姉?」
瑞鶴が少し返答に困ったように翔鶴を見た。
「いいじゃない瑞鶴。別に秘密にすることじゃないわ。」
「でも、せっかく練習しているのに、知られたら面白くなくなっちゃうわ。」
「瑞鶴さん、紀伊さんなら大丈夫ですよ。」
「秘密の事ですか?なら聞かないでおきます。」
紀伊は少し笑いながら言った。3人は少し目顔でうなずき合っていたが、やがて瑞鶴が
「あ〜まぁ、いっか。紀伊ならいいかな。あのね、私たち鎮守府さくら祭りでコンサートをやるつもりなの。」
「コンサートですか!」
「いつかもお話したように各艦娘から有志が集まって色々な出し物をやるんです。」
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