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八神家の養父切嗣
五十三話:敵は内にあり
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のように壁が割れ床は抜け落ち天井は崩れ落ちる。それでもなおヴィヴィオのいる玉座だけは無傷なのはゆりかごの意思なのか、はたまた母の愛なのか。それは誰にもわからない。

「初めは誰もが私達を嘲った。愚弄した。できるはずがないとね」

 何が面白いのか男は昔を思い出しながら笑い続ける。誰もが彼らの言葉を綺麗ごとだと言った。力なく何度も挫折する様を見てそれみたことかと嘲笑した。だが、彼らは決して歩みを止めなかった。こければまた立ち上がり歩いた。足を撃たれれば地面を這って進んだ。四肢を砕かれれば噛みついて敵を倒した。その姿に少しずつ続く者達が現れた。彼らの理想を共に夢描くようになった。


「我々は空想家だと言われた。救いがたい理想主義者だと言われた。できもしないことを考えていると言われた。その度に私は何千回もこう答えてきた―――“その通りだ”とね」


 その強い意志に、揺るがぬ信念になのはは敵だというのに尊敬の念を抱かずにはいられなかった。憧れを抱いてしまった。いかに歪んでいようとも、世界を救いたいという願いに嘘偽りなどない。超絶的な技量も、築き上げた地位も彼を飾り立てるには余りにも力不足だ。


「私は世界の救済を諦めることはしない。何故なら―――諦めなければ夢は必ず叶うからだ!」


 決して諦めることをしない精神性こそが―――彼を英雄たらしめるのだ。

 その夢がどれだけの犠牲を伴うものであったとしても、誰もが彼に反対しようとも彼は諦めない。例え世界が滅んだとしても彼は歩みを止めることはしないだろう。何故なら彼は救いようのないほどに自分を信じているから。

「さあ、雌雄を決めよう。その力をもって私を超えてみせなさい。もっとも、私の夢を打ち破れるのならだがね」
「……私は、あなたのやり方を否定する。いつの日にか本当に犠牲なんてない世界にみんなで辿り着けるように」

 激しいぶつかり合いを繰り広げながら両者共に魔力収束を始める。両方の魔力が混ざり合い不思議な色をした魔力が徐々に渦を巻いていく。共に己の最高の一撃に信念を込める。それらを打ち破られるということは思想、理念、諸々を壊されると同義だ。故にこの一撃で全てが決まる。

Intensive Einascherung―――(我が敵の火葬は苛烈なるべし―――)
「スターライトブレイカー―――」

 収束され圧縮された魔力が術者すら押し潰さんとする。だが、二人共が微動だにせず相手を睨み続ける。古き時代の英雄と新しい時代を作る英雄。その思いの丈を乗せた砲撃が今、放たれる―――




【自害せよ、■■■■】




 だというのに、それは呆気なく終わりを告げる。どちらかが相手を倒すまでもなく幕は閉じられた。―――男が自らの心臓を貫くとい
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