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八神家の養父切嗣
五十三話:敵は内にあり
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。それは分かっているだろう?」
「…………」

 このまま小手先の勝負では勝ち目はない。男の言うとおりだ。それはなのはもよく理解しているために何も答えない。前衛のいない砲撃魔導士が最大威力の一撃を撃ち込むには相手動きを自力で止めなければならない。だが、相手はフェイトやシグナム以上に隙がない。バインドで動きを止める戦法も通じる相手ではないだろう。ならば、自分が相手よりも勝っている部分で勝つ以外にない。


「―――命をかけなさい。あるいはこの身に届くやもしれん」


 その言葉になのはの覚悟は決まる。自身にかけていたリミッターを完全に解除する。それは本来の力を抑える類のものではない。本来であれば体が壊れるために決して使われることのないリンカーコアのリミッターの解除。俗にいう火事場の馬鹿力を強制的に引き出す諸刃の剣。この戦いが終わった後に体がどうなるかはわからない。しかし、ここで使わなければ後などもとよりない。

「技術ではあなたには勝てない。なら私は力であなたを上回るしかない」

 莫大な魔力をもって技術をねじ伏せる。なのはがとった作戦は言わば力押し。作戦も何もない単純な思考である。だが、それはある意味では真理だ。総合格闘技のチャンピオンであってもゾウの何気ない足蹴一つで命を絶たれる。あまりにも隔絶したパワーは技術という人の営みを容易く葬る。

「面白い。ならばその力を私に示して見せよ!」
「いきます…!」

 短い言葉と共に先程とは比べものにもならない極太の砲撃を放つなのは。その大きさは狭い一室ではとてもではないが避けられるものではない。だが、元より男に避ける気などない。相手の全力を自らの技巧をもって組み伏せてこその英雄。杖の一振りで何十層もの防壁を重ねて生み出し威力を殺し、その上から自らも炎の砲撃を放ちなのはの砲撃を相殺する。

「それが本気かね? 私を失望させないでくれたまえ」
「なんの…! まだまだ上げていくよ!!」

 なのはの攻撃は一撃打つたびに自身の命を削りとる呪いの装備のようなものだ。だが、攻めの手を緩めることは決してない。攻撃が通らずとも、全てを技巧により組み伏せられようとも諦めることはしない。撃ち落されることが負けなのではない。足を止めることこそが敗北なのだ。

「ふ、ははは! そうだ。その不屈の意志こそがエースオブエースだ! 君を見ていると昔を思い出すよ」
「馬鹿にして!」
「いや、私個人は君を高く評価しているよ。だからこそ惜しい。君ならば誰に何を言われようとも理想を追える強さを持っているというのに」

 煉獄の業火と桃色の光線が激しくぶつかり世界の終焉のような光景を生み出す。戦略の切り札同士がぶつかり合う。戦場に出せば必ず勝つ札が同時に存在する矛盾。その矛盾に世界が耐えられないか
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