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八神家の養父切嗣
五十三話:敵は内にあり
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でも心変わりはしないかね?」
「誰が!」

 息を切らしながら反論するなのは。その額には運動と炎熱変換の魔力による膨大な熱量による大粒の汗が光っていた。反対に男の方はこの程度の熱で汗をかくなど優雅ではないと言わんばかりに涼しげな笑みを浮かべている。現時点での戦況は五分五分といったところであろうが長引けば長引くほど体力を奪われていきなのはが不利になるだろう。故に短期決戦で決めなければならない。

「ディバインバスターッ!!」
「頑固なものだ。いや、だからこその強さか」

 しかしながら簡単にやられてくれる相手でもない。今度は宙に魔方陣を描き出しそこから噴火のように炎を放射させなのはの十八番の砲撃を正面から受け止める。先程からの戦いで分かったことといえば相手は恐らく自分よりも魔力量は少ないということぐらいだ。しかし、それが弱点になっているかといえば全くそういったことはない。

 足りない魔力を極限にまで効率的に運用し10の威力に対して1のエネルギーで賄っている。それは凡庸でありながらも10の結果を求められれば20の修練を積んできたが故になせる技だ。徹底した自律と克己の意志。その強さにより混迷を極める次元世界で戦い続けた彼だからこそ人々は畏敬の念を込めて“エースオブエース”と呼んだのだ。

「本来であれば後衛でなければ真価を発揮できない砲撃魔導士でありながら私と互角の戦いを演じるとは驚嘆に値する」
「それは…どーも!」

 自分の方が圧倒的高みにいると理解したうえでの称賛に対して皮肉気に返しながらなのはは砲撃を撃ちながら飛ばしていたシューターを背後から強襲させる。いくら英雄といえども背後に目はついていない。後ろから刺されてしまえば何が起きたかも分からずに倒れ伏すだけだろう。だが、次の瞬間にはその考えが甘すぎたという事実が突き付けられた。

「残念だが―――英雄に死角はない」

 近づいてシューターが全て撃ち落される。しかし男が動いた形跡はない。驚くなのはの目に突如として翡翠の鳥が数羽、彼の周りを飛び回っている光景が映る。

「まさかビット…?」
「ご名答。翡翠を原料にして私が作り上げた自動で動く傀儡を幻術で隠し潜ませておいたのだよ。私の背後に死角は存在しない」

 その宣言になのはは苦虫をかみつぶしたような顔をして砲撃を止めさらに距離をとる。不意をつくことで隙を生み出させようとしたのだが威力の低い攻撃ではあれを抜くことはできないと判断したからだ。

 男は最初にわざわざビットを使わずに自らの手でシューターを落とすことでその存在を隠蔽しなのはの策を潰したのだ。彼は計算高く、その反面自ら宣言するような自信も持ち合わせている。なんとも嫌な相手だと改めて実感しながらなのはは汗を拭う。

「このままでは君に勝ち目はない
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