外伝1 国別対抗戦予選リーグ編 1話
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ともう1人の代表である柿原の試合はもう終わっているのだ。それなら気付く可能性は充分にある。
―――よし、送信。送信ボックスのメールは削除。これで―――……っ!?
「……ぐっ! ごふ、げほっ!?」
その突然の衝撃に胃液が逆流し口内から地面へと吐き出す。鬼一は自分の腹部をバッドで突かれたことに一瞬気づけなかった。
鬼一の行動に気づいた女の1人が慌てて走ってきたのだ。激烈な怒りを伴って。
「ガキ! アンタ何をしてやがる!」
2回目は金属バッドではなく、腹部を蹴り上げられた。それでもう一度戻してしまう。
「おい! このガキ携帯で連絡取ろうとしてやがるぞ!」
その大声に仲間達もそれぞれ声を上げながら出入り口近辺から走ってくる。自分の手から落ちた携帯を拾われた。だが、もう必要ない。鬼一は自分のすべきことをしたのだから。あとは時間の問題だ。
髪の毛を掴まれて頭を持ち上げられ、女の拳が何度も鬼一の顔に打ち付けられる。女の拳と言っても子供である鬼一からすれば充分な威力を伴っているそれ。鬼一は抵抗することもままならずただ歯を食いしばって殴られ続けることになる。
―――――――――
アヤネは自分の試合が終わった後は他のグループの試合を観戦していた。自分の弟分以外のグループはほとんど波乱はないだろう、と考えていたがそういう時に限って面白い展開が起きることを知っているアヤネは疲れている身体を起こして観戦に足を運んだのだ。
だがアヤネの当初の予想通り、波乱はほとんど起きずに着々と進行していく。
観客席の1番後ろでモニターに映っている試合を眺めながら『先輩』と話す。
「随分と退屈そうだねアヤネちゃん」
先輩、というよりも日本のe-Sportsの宝と呼ばれている男の苦笑が混じったその声にアヤネは不満そうな顔を隠そうともしない。
「……そりゃこんなしょうもない試合が続いたら誰だって退屈ですよ。ほら、さっきに比べてお客さんのテンションも低いですし」
アヤネは足を組んだまま乱暴な手つきでペットボトルに口をつける。
―――どいつもこいつも沢山の人に見られている、っていう意識ないんじゃないの? 勝てばなんでもいいと思っている連中の多いこと多いこと。しかも中途半端で徹してきれていないから寒いどころか、見苦しいだけなんだよね。
心の中で愚痴を漏らす。昔、最初期の頃のプロゲーマーは間違いなく観戦者を惹きつけるプレイを量産していたというのに、今はルール内の中なら何でもやって勝てば人が見ると勘違いしていることにイラつく。
別に勝つのが全てならそれはそれでいいとアヤネは思う。それだってそのスタイルを突き詰めていけば立派な個性であり、人を惹きつけるもになりうるのは間違いない。
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