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世界最年少のプロゲーマーが女性の世界に
外伝1 国別対抗戦予選リーグ編 1話
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た。

 ―――食事取る感じでもないし、仮眠取るのもまた違うな。研究は全部終えているし、練習も充分に行った。どうしようかな。

 2時間という短くも長くもない中途半端な時間。緊張していないわけではないが、肩の力は抜けているしテンションも普段と変わりない。
 鬼一にとって代表の椅子など副産物。彼にとって大切なことは自分の全力で勝利を得られるかどうかの1点であり、勝敗が第一にある以上国別対抗戦の代表などオマケと言っても差し支えない。
 そう考えているからこそここまで勝ち残ったという部分もある。余計な思考を混ぜていないからこそ純粋に試合に集中出来ているのだ。

 ―――……しょうがない。飲み物でも買ってくるか。ちょうど切らしてるし。

 ホール内にあるベンチから腰を上げて立ち上がる。アーケードコントローラーを左手で抱えてホール内を歩き出す。
 カツンカツン、とホール内に歩行音が反響。
 歩いている途中で鬼一は唐突に、その違和感を覚えた。

 ―――……ん?

 一度足を止めて振り返る。そこには誰もいない。
 もう一度歩き出す。

 ―――……なんか、音が複数あるような……。

 自分が歩く音に混じって別の音が聞こえる。それも複数。
 再び足を止めて振り返った。やはり何もない。
 特別何かを感じ取った訳ではない。だが、『なんとなく嫌な感じ』がしただけだ。
 前を振り向いた瞬間―――、鬼一は全力で走り出す。
 アリーナ目指してホール内を駆け抜ける。
 同時に、後方から複数の足音が鬼一の鼓膜を叩いた。
 もはや振り返る余裕もない。ただ全速力でホール内を駆け抜ける。認めたくはなかったが明らかに異常な状況だ。理由は分からないが、とにかく自分が複数の人間に追い回されているということだけは理解出来た。
 そして、捕まったら洒落にもならない事態が待っているような気がした。

 ―――人様に追われるようなマネをした記憶がないんだけど……っ!

 階段を駆け上がり2階ホールに到達。運動不足の身体を呪いたくなる。こんなことなら先人のアドバイスを素直に受け取って自分も身体を鍛えておけばよかったと後悔。後方からはまだ複数の地面を叩く音が聞こえる。
 会場が特殊な構造をしていなければもっと楽だったのに。と内心愚痴る。

 ―――……もう少し!

 足音に混じって歓声が耳に飛び込んでくる。アリーナまで距離が無いことを示している。

 だが、そこまでだった。

 両足のスネに走る衝撃。遅れて全身が硬質な地面に叩きつけられた。一瞬何が起きたのか鬼一には分からなかった。
 視線が先ほどまでの高さに比べて遥かに低い位置にあることに気づいて、そこでようやく自分の身体が物理的に倒されたということが理解出来た。

「……
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