Side Story
少女怪盗と仮面の神父 19
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に追い着くより先に、体が現実を把握した。
地面すれすれで小箱を手放し。伸ばされた青年の手を避けて大きく跳び退り。
シーツを投げ捨てて、今来た道を逆走する。
「待っ……そっちに行っちゃ駄目だって!」
(! やっぱり、ネアウィック村から遠ざけてたのね! って事は、この山の反対側か!)
背後にドス、ドスと鈍い音が数回聞こえた。
が、青年の叫び声は至って元気なので、恐らく地面に追加された斧か何かで足止めされたのだろう。
青年は強い。簡単には殺されないと信じ、決して振り返らずに前へ向かって全力で走る。
「あぁもぉーッ! ただでさえ出張費嵩んでるのに、減給されて生活に行き詰まったら君の所為だからなーッ! つーか、どうするんだよこれぇー!」
「ごめんなさいー! その食料は名前も教えてくれなかった親切な貴方に差し上げますー! 葉物野菜はおひたしがオススメ、干し肉は上手く煮込めば出汁も濃厚、栄養満点! 美味しく食べてねー! 健闘を祈るーっ!」
「だぁああー! この期に及んでまだそ……なこ……を! 狙われ…………の 君だ………… ー!」
ミートリッテの俊さは、南方領に勤める男性騎士達を軽く上回る。残念な話、就職活動では全く役に立たなかったが……逃げ足だけならきっと、アルスエルナ全土を探しても彼女に敵う者はいない。
木々に反響する青年の怒声もあっという間に掠れ消え、下った時間の半分程度で、火を付けた家の前に辿り着いた。
「……なる、ほど。俺、達……か」
青年が火付けの証言と責任負担を求めた時、わざわざ「大丈夫だとは思うが」と前置きした理由……現場に戻って理解した。ぜいぜいと浅い呼吸を繰り返して少しぼやけた視界に捉えた家は、壁の一部が崩壊し黒焦げになりながらも既に鎮火されている。
遠くから突然危険物をぶん投げる荒くれ者共がこんな親切心を発揮してくれるとは到底思えないので、現状は「俺達」の働きと見てまず間違いない。
か細い煙が所々で上昇して火災の激甚さを物語っているが、周辺の水浸し具合を見ても再燃の可能性は低そうだ。
併設された資材置き場の道具達が再起不能に陥っているのは……やっぱり、後日応相談だろうか。覚悟だけはしておこうと、そっと目を逸らす。
しかし、たったの数十分でこの迅速且つ的確な仕事ぶり。
青年が所属する「俺達」は余程の大所帯なのか、こうした事態に慣れているのか。泥濘に残された靴跡は多くないから、此処に居たのは慣れた少人数かも知れない。
「あぁ……何はともあれ、山火事にならなくて良かった……。ありがとう「俺達」さん。いや、放火犯の私が言うのもおかしいんだけどさ」
青年との下山道中より幾分軽くなった手で目蓋を擦り、興奮した体を深呼吸で落ち着かせる。
そうしている間も帰還の歩みは止
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