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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜銃声と硝煙の輪舞〜
列車の行方は誰も知らない
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の服。だが、こちらに向けられた銃口の黒々とした穴は、そのどれよりも深い洞のように感じられた。
恐い。
初めてそこで、少女は痺れる脳からその感情を拾った。
震えという名の身体の条件反射で固まる彼女をほったらかし、男達は更なるアクションを起こす。
声が聞こえた。
同時、複数の人影が目の前に投げ出される。
それは、大人達だった。周囲の子供達と同じく、見たこともない顔が多いが、チラホラとご近所の顔見知りのおじさんやおばさんの顔が見える。
よく挨拶を交わす顔を――――何より見知った大人を見たという安堵が少女の涙を一瞬にせよ拭い去り、笑顔を思い出させる。
高度を上げても、落下した時のダメージが大きくなるだけだろうに。
そんな彼女をさらに笑顔にさせる因子もあった。
両親だ。
後ろ手で縛られ、口には布を噛ませられているが、その人相は誰よりも早く分かる。
思わず駆け寄りたい衝動に駆られるが、その前に男達の銃で牽制される。
男達は互いに聞いたこともない言語でぼそぼそと喋っていた。
幼い少女には、それが遥か南方――――中東の辺りの言語だとは分からない。
その中の一人、恐らくは通訳か、もしくは単に喋れるのか、自分達の言語で直近にいた少女に向かって口を開く。
「
Это - Ваши родители
(
それがお前の親か
)
?」
野太い粗野な声。
男の声など父親ので聞き慣れているはずなのに、その声は凶暴なまでの威力で少女の耳朶を揺さぶった。
ちっぽけな肩を哀れなほどに跳ね上げて、彼女は震えながらも首を縦に振る。
声のないその返事に男は何も返さない。街灯が逆光になり、男の顔に濃い影を落としているので表情も分かりずらい。それも相まって、少女の心が不安で掻き毟られる。
二、三言仲間と言葉を交わした男は、少女に向かっておざなりに何かを突き出した。
ナトリウム灯のオレンジ色の光に照らされたのは、武骨な黒鋼色の鉄塊。
紛れもない――――拳銃だった。
なに、を……?
そう言おうとしても、ノドが干上がったように何も言えない。そんな少女の手に、男は突き出した拳銃をしっかりと強引に握らせた。
途端に手のひらを通して伝わってくる、異質な冷たさ。
雪や氷、そういうものに冷やされた鉄の冷たさとは一線を画すもの。
人を殺す武器特有の、とでもいうのだろうか。得体の知れない圧力が少女の双肩に重く圧し掛かった。
固まる少女の耳元に、悪魔の囁きがもたらされる。
「
убить
(
殺せ
)
」
「………………………………………ぇ」
震える顔を。
震える首を。
ゆっくりと巡らし、男の顔を見た少女は――――悟る。
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