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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十八話 謀多ければ……
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「教えるのか?」

シュタインホフ元帥だけではない、リヒテンラーデ侯もエーレンベルク元帥も驚いている。
「ルビンスキーにフェザーン侵攻は帝国の決定事項であると教えましょう」

「それでどうなる」
「フェザーンでは反ルビンスキー勢力が動き出すはずです」
“反ルビンスキー勢力” リヒテンラーデ侯が訝しげに呟く。

ルビンスキーは自治領主になる際、すんなりと自治領主になれたわけではない。まだ三十代だった彼に反発した勢力があった。彼らは今現在はルビンスキーの前に大人しくしている。

彼らはルビンスキーに心服しているわけではない。その力量に服従しているだけだ。その力量に綻びが出れば当然動き出すだろう。俺がその事を話すと老人三人は納得したようだ。

「なるほど、ルビンスキーの足元を弱めるか?」
「はい」
「卿もいい加減悪辣だな」

シュタインホフ元帥が呆れたような声で俺を悪辣と言っているが、これは必要な事だと思っている。問題は地球教だ。今は未だ誰にも言えないだけに俺が何とかしなければならない。

今の時点で潰す事は出来ないだろうが、彼らを混乱させる事は出来るだろう。フェザーン内部でルビンスキーの統治力が低下した場合、混乱が発生した場合地球教はどう動くか。

地球教はルビンスキーを切り捨てるか、反対派を弾圧するかの選択を迫られる事になるだろう。そしてルビンスキーは簡単に切り捨てられるような男ではない。

どちらにしろフェザーンは混乱するだろう。その分だけ地球教もフェザーンに気を取られ動きは鈍くなるだろう。そしてフェザーンが混乱したほうが軍事行動は起し易い。

「しかし、先ずは反乱軍に勝つことじゃの。負ければ元も子もない」
リヒテンラーデ侯が憮然とした表情で言葉を吐いた。その通りだ。勝たなければならない。圧倒的に。

「そのために、国務尚書にお願いがあります」
「どうせまた良からぬ事であろう」
「よくお解りで」

リヒテンラーデ侯の言葉に俺は思わず苦笑した。侯も苦笑している。此処最近、老人たちに悪辣だと言われる事が多くなった。自分でもそう思う。しかし、止めるつもりは無い。

謀多ければ勝ち、少なければ負ける。その通りだ、勝つために、大きく勝つために謀略を仕掛ける。この一戦が人類の未来を決めるだろう。大きく勝てば帝国が宇宙を統一する。

損害が小さければ宇宙は混沌とするに違いない。そして負ければ、帝国は滅ぶだろう。それだけの意味を持つ戦いになるはずだ。

「エーレンベルク元帥、国務尚書と司令長官は血縁関係に有ったかな、良く似ているような気がするのだが」
「血縁関係は無いが良く似ているのは確かだな」

俺とリヒテンラーデ侯の遣り取りを聞いていたエーレンベルク、シュタインホフの
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