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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第十六話 やり直し
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 だけど同時に、期待することもある。

 それはきっと――――、

「お兄ちゃん」

「柚那……?」

「話しがあるの」

「……ああ」

 台所から離れ、俺と雪鳴の前に柚那が現れた。

 柚那は怯えた様子で両手でエプロンの裾をギュッと握り締め、しかし視線は俺を見つめて離さない。

 震える唇から吐息が少し漏れると、一度頷き、決意新たにといった面持ちで俺に話す。

「アタシ、お兄ちゃんがいなくなってからの五年間、ずっと寂しかったの」

 それは雪鳴の妹としてではなく、柚那自身の話しであり、言葉。

「お兄ちゃんと一緒にいるのが楽しかったから、もう二度と会えないだと思ったら怖くて、寂しくて……。 だけど、お姉さんも同じだって知った時に、お兄ちゃんを思う気持ちに嘘をついたの」

 柚那は隠すことなく当時の、そして今に至るまでの心境を語る。

 それを俺と雪鳴は無言で見つめ、柚那の言葉に耳を傾けた。

「お姉ちゃんを泣かせたお兄ちゃんは悪者だって思うようにして、お兄ちゃんに対する思いを無かったことにして、お兄ちゃんを倒すために強くなろう想い続けようとしたの」

 「だけど……」と言った所で柚那の声は震え、掠れ、瞳からは涙が溢れていた。

 それを必死に堪えながら、俺の瞳を……その先にある、俺の心を見つめて話し続ける。

「だけど、思い出に嘘は付けなかった。 さっき、お兄ちゃんが助けてくれた時に思い出したの。 アタシが転んだり落ちたり溺れたりしたら、お姉ちゃんよりも早く助けてくれたのがお兄ちゃんだってこと。 どんな時でもアタシを助けてくれた……アタシのヒーローが、お兄ちゃんだってこと!」

 柚那は声を張り上げてそういった。

 俺は彼女にとってのヒーローなのだと。

 それは柚那にとって、どれほど大きな存在なのか俺にはよくわからない。

 ヒーローと聞いてピンと来ないからなのか、それすらも分からないけど。

 ただ一つ言えるのは、柚那は雪鳴と同じようにこの五年間……ずっと俺のことを考えてくれたってこと。

 ずっと俺のことを、本物の家族のように思ってくれたってことが伝わってきて、心の底から嬉しい。

 俺は自分自身、大したことなんてしてないと思ってたし、五年前のあの頃はしばらくすれば俺のことなんて忘れるだろうと高を括ってたところもあった。

 ほんの僅かな時間しか一緒にいなかったから、きっとすぐに思い出は薄れて消えていくだろう。

 そんな風に思ってたけど、雪鳴も柚那も忘れずにいてくれた。

 家族を失って、独りになった俺にとってそれがどれだけ嬉しかったことか。

「だから昨日は……お兄ちゃんを傷つけて、ごめんなさい」

 深々と頭を下げた柚那に
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