ありがとう!(V完結編)
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。建ちゃんも、誤って」と、言った。「今までも、父ちゃんと生活していて、俺も仕事で、遅くなる日が時々有ったから、大丈夫」と、建一が言った。自宅に7時頃に到着した。家には灯りが、全く点いていなかった。「お父さん、怒って寝てしまったの?」と、恐る恐る幸世が言った。二人は、物音を起てない(たてない)様に、玄関を開けたら、一斉に灯りが点灯した。「おめでとう」と、声が入り乱れて飛んだ。居間には集落の人が全員、集まって居た。道の駅で会った老人達が、集落の全員に、事前に連絡したのだ。集落の人達が持ち込んだ料理が、座卓に一杯、並べて有った。長老が挨拶に立った。「建一さん、幸世さん、おめでとう。幸世さんの悲しかった事、寂しかった事、全員が解っている。集落の人達は一蓮托生だ。これからは何でも相談して下さい」と、述べた。別の村人が、乾杯の音頭を取った。「御両人の前途を祝して、乾杯」全員から「乾杯」の合唱が鳴り響いた。思うもよらぬサプライズに、二人は感激した。幸世は、集落の絆に涙し、考えても無かった、優しい場所に、自分が居る事を実感した。建一は、村仲間と冗談を言い合い、笑っている総一郎を、見詰めていた。総一郎が善人の塊の様に見えた。建一は、自分が養子だった事実を知ったが、総一郎には決し口に出さなかった。その夜、遅くまで二人の祝宴で、早川家は大いに盛り上がった。
翌日、二人は朝一番で、町役場を回って警察署に行った。昨日は、町役場が閉まる時間だったので、婚姻届だけで、住民票の発行までは、して貰えなかった。町役場で住民票を取り、警察署の運転免許証の窓口に、
運転免許証と住民票を提出した。係官が幸世に「名前と住所の変更ですね。本人確認の為、サングラスとマスクは外して下さい」と、言った。幸世は、サングラスとマスクは外した。係官が運転免許証に載っている旧住所を読みながら、上目づかいで、幸世を凝視した。咄嗟に幸世は、目を背けた。二人は、昼前には自宅に戻った。幸世は、昼食に、三人分のグラタンと、小盛りのモンタ用のグラタンを作った。モンタは、幸世の膝の上で、冷ませ(さませ)ながら、スプーンで少しずつ、幸世に食べさせて貰った。建一と総一郎は、舌鼓を打った。美味しかった。昌五の部屋の料理の本で、幸世は料理を覚えた。料理の本は、日本料理は元より、多岐に亘っていた。幸世は家事が好きで、特に裁縫と料理は、得意だった。午後、総一郎が仕事場から出て来て居間に入ると、幸世が電動ミシンで、何かを作っていた。総一郎が「幸ちゃん、何を作っているの?」と、聞いたら、幸世は「お父さんのパジャマを、作っているの。この前に借りたパジャマ、二着とも、ボロボロだったから。明日には出来るから」と、言った。次の日、総一郎のパジャマは出来上がった。赤色と黄色の二着のパジャマで、胸にはS・Hのイニシャルが縫い付けてあった。総一
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