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ありがとう!(V完結編)
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て「助手席に乗っている女の人は誰?さっきの、携帯電話からの女のひと?」と、建一に聞いた。「俺の嫁さん」と、建一は答えた。老人達は口を揃えて「へえー、ぶったまげた、見せてよ」と、驚いた口調で言った。建一が、幸世に手招きをした。幸世が、車から降りて、建一の横に立って、会釈をした。老人が「顔を見せてよ」と、言った。幸世は躊躇った。建一が「大丈夫」と、言った。幸世が、サングラスとマスクを外した。「ふぃあ!別嬪さんだ」と、老人達が絶賛した。老人達の中に、以前、昌五と道の駅に来た時に会った、老人が居た。一瞬、幸世は、老人との目線を逸らした。老人は、思い出した様に「以前、道の駅に、弟さんと来た娘さんだ。何処かで会った様な気がしていた。大変だったでしょう。心配だった」と、言い、微笑みながら、握手を求めてきた。幸世に取って、想定外な反応だった。幸世は、人の温かさを感じた。建一は「これから、町役場に行くから、また後で」と、言って、幸世を乗せ、道の駅を後にした。町役場は市役所とは異なり、規模が小さく、町民課が戸籍の業務を併用していた。市から貰ってきた戸籍謄本を提出して、二人は婚姻届を出した。町役場が閉まる間際で、町民は居なく、職員は帰り支度を済ましていて、不機嫌だった。二人は待合シートに座った。建一がトイレに行く為、待合シートから離れた。職員が幸世を見て「早川幸世さん」と、呼んだ。幸世は返事を、しなかった。再度、「早川さん、早川幸世さん」と、呼ばれた。幸世は自分の事だと悟った。「はい」と、返事をして、慌てて窓口に行った。丁度、建一がトイレから戻って来た。建一も、自分の戸籍謄本を取ってみた。建一は唖然とした。もう一度、戸籍謄本を食入る様に見た。建一は、総一郎の養子だった。実母は総一郎の妹で、二十歳前に他界し、総一郎には結婚した形跡が、全く無かった。建一は[自分の母は、建一が幼い頃に死んだ]と、総一郎から聞いていた。建一は[結婚もしないで総一郎は、男手一人で、妹の子供を育てて呉れたのだ]と、思った。幸世が「如何したの?」と、聞いた。建一は戸籍謄本を幸世に見せた。幸世は「お父さん、凄いね。神様の様ね」と、言って涙ぐんだ。婚姻届を済ませ、既に日没時間は過ぎていた。
二人は家路を急いだ。運転中の建一は、無口で表情が硬く、何かを見詰めている様で、朝とは一変していた。建一は、総一郎の部屋を、はたと思い出していた。部屋には、総一郎が作った厨子の中に、位牌が飾って在り、二人は常日頃、拝んでいた。位牌には、早川礼子と書いてある。[位牌名前は、総一郎の妹の名前で、妹が実母だったのだ]と、自覚した。車の中で幸世は、建一を、和らせる為に「町役場で[早川幸世]と、始めて呼ばれたの。今日から私、早川幸世だね。慣れないと」と、言った。少し於いて「お父さん、遅くなって、怒っているかな?帰ったら誤って夕食、作るね
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