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ありがとう!(V完結編)
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住所・電話番号を記入して下さい」と、言って書類を渡された。幸世は書類に、始めて早川幸世と書き、集落の住所を書いたが、携帯電話の番号は以前と同じなので、書かなかった。次に、二人は、以前、幸世が家族と住んでいた、市役所の戸籍課に向かった。途中の車の中で、幸世はバックからサングラスとマスクを取り出し顔に、付けた。幸世は、人目の多い所は、避けていた。幸世は、知り合いと遭遇するのを、極力、恐れていたのだ。市役所に着いた。車から降りた幸世は、建一の手を強く握り締めた。二人は手を繋ぎ、戸籍課に行った。それは彼が、盲人を引率しているかの様にも見えたが、建一は幸世に頼られている事を自覚し、嬉しかった。幸世の戸籍謄本を貰い、二人は、ホームセンターに向かった。この店は、市内でも随一の大型店で、全ての物を揃えていた。しかも、この店は、建一が常日頃、農作業に必要な物や、総一郎の木工製品作りに必要な物を、調達する店でもあった。今日はウイークデイで客は疎らだったが、幸世は絶えず、建一の手を、握り締めていた。二人は、食料品と幸世の衣服と野菜の種を買ったが、女性の下着売り場だけは、建一は近くで待機した。ホームセンター内のレストランで昼食を摂り、店の出口に差掛った時、幸世は立ち止った。卓上電動ミシンの実演販売をしていた。メーカーの社員が「新商品のキャンペーン中なので、通常価格より三割安い」と、力説していた。幸世は、じっと、実演販売を見詰めていた。建一は「欲しいの」と、聞いた。幸世は頷いた。建一には、あいにく、金の持ち合わせが無かった。カード払いでも可能かメーカーの社員に聞いたらOKだった。食料品と幸世の衣服と卓上電動ミシンで、ショピングカートは一杯になった。幸世は、建一の手を引っ張り、別の売り場に連れて行った。そこは、生地と毛糸の売り場だった。幸世はサングラスを、外しては掛け、外しては掛け、夢中になって生地と毛糸を見た。そして、数点の品を買った。ショピングカートは、山積みになった。購入した品物を、軽乗用車の後部席とトランクに積み、道の駅に向かった。運転中の建一は、助手席の幸世に、自分の携帯電話のアドレスから、道の駅の居る集落の老人に、電話する様に頼んだ。幸世は、建一の携帯電話から電話しようと、画面を見た。画面には、銀行時代の自分の写真が有った。幸世は驚いて「いつ撮ったの?」と、聞くと、建一は「二度目に銀行に行った時の、盗み撮り」と、照れ笑いで答えた。道の駅の老人に幸世が電話したら、老人は建一の携帯電話からの声が、女だったので驚いていた。道の駅では、集落の三人の老人が、帰り支度をして、待ち焦がれていた。「建一さん、遅いよ」と、老人が言った。約束の時間より、大幅に遅れていた。建一は、急ぎ軽乗用車のトランクから、野菜の種を降ろし老人達に渡した。「ごめん、ごめん」と、建一は謝った。老人の一人が、気付い
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