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ありがとう!(V完結編)
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ていた。モンタが、建一の肩に飛乗った。揺子が、建一の足に抱き付いた。建一の頭には町長、就任当初より、過労が重なり、白髪が増えていた。幸世が、建一の胸に抱き付き「お疲れ様」と、言った。
最近、総一郎が胸部に痛みを感じ、頻繁に咳をする様に成った。元来、総一郎は医者嫌いだった。幸世は心配し、総一郎の体を擦ったり、食事にも気を使っていた。しかし、総一郎の体は、痩せる一方だった。見かねた建一は、総一郎を無理矢理に、病院に運んだ。医師の診断結果は、アスベストに依る悪性胸膜中皮腫の末期の症状で、胸部には、多数の腫瘍が現れていた。昔、総一郎の土壁の意向に反し、塚本工務店の一人娘・塚本久子は、大工達にアスベストの使用を強要していた。仕事に生真面目な総一郎は、大量のアスベストを吸い込んでいた。建一は医師に「入院しても、回復の見込みは僅かです」と、告げられた。総一郎は塚本久子に、片足を取られ、命までも奪われる事に成った。総一郎は自宅で療養する事に成り、幸世は献身的に介護した。隣に住むトヨと一枝・健太・真喜は毎日、総一郎を見舞った。総一郎は村人を気遣い「自分の病気の事は、伏せておく様に」と言い、皆も了解した。総一郎が床に付くと、揺子はモンタと一緒に、欠かさず総一郎と寝る様に成り、揺子は学校での出来事などを子守唄の様に話し、総一郎も嬉しそうに聞いて寝た。一週間程、過ぎた。早朝、モンタが、建一と幸世の部屋に、飛び込んで来た。二人は急ぎ総一郎の部屋に行った。揺子が総一郎の胸にしがみ付き、大粒の涙を流していた。「お父さん、起きて」「父ちゃん起きろ」二人は何度も叫んだ。総一郎の返事は無く、顔は安らかな聖人の顔だった。暫くして、モンタが建一の手を引き、総一郎の道具箱を開ける様に促した。道具箱の中には、一通の手紙と、古ぼけた一枚の集合写真が入っていた。写真の裏面に早川総一郎・妻/礼子・長男/建一 と書かれていた。手紙には[建一が生れた時に、俺と、母さんと、赤子の建一とで、一緒に撮った写真だ。母さんは、産後の肥立ちが悪く、即、逝ってしまった。三人で撮った写真は、この一枚だけだ。大切にしてくれ。母さんの位牌に俺の名前も刻んで、夫婦位牌(みょうといはい)に、してくれ。建一は優しく立派に育った。あの世で母さんに自慢できる。俺の骨は、庭のモンタの母猿と一緒に埋めてくれ。骨は、優しい家族の傍に居たい。優しい建一・幸ちゃん・揺子・モンタ・一枝さん・ケンちゃん、マーちゃん・トヨさん・村の衆 有り難う、有り難う、有り難う。俺は優しい皆に囲まれて、幸せだった。あの世で、母さんが寂しく待っている。母さんに約束した通り、建一を一人前に育てたから、もう母さんを待たせたら悪いよ]と書かれていた。それは聖人が一生、貫き通した、慈悲に満ちた偽りの文面だった。「父ちゃんの嘘、婚姻届を出した時に俺達、知っているよ。でも、有り難う
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