ありがとう!(V完結編)
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労したから、子供には苦労させまいと、甘やかして育てた。親の教育の失敗です。深く、お詫びします」との、謝罪の言葉だった。数日後、通帳を見ると、久保葡萄園から、大金が振込まれていた。
信雄の検挙を見届け、建一と幸世は事務所に戻った。事務所のテレビに臨時ニュースが流れた。それは、現荒井町長の、出馬断念のニュースだった。荒井町長は、建一の人気に恐れを抱き、勝ち目が無い事を悟り、出馬を諦めた。かくして、建一の無投票での勝利が確定した。事務所で万歳の声が鳴り響いた。その夜、総一郎の家は、当選祝いに駆け付けた人で、ごった返し、庭の外まで溢れた。早川町長、万歳の声が、何度も響き渡った。
一ヶ月後、建一は、自らの白色の軽トラックに乗り、農園の作業着姿で登庁した。軽トラックの後には、町長専用の公用車が、空車で繋がった。初登庁に、全職員が町役場の玄関で出迎えた。秘書課長から、花束が手渡された。秘書課長は、矢部と云う名前の男だった。初日から、型破りの町長だった。建一は町長室には入らず、四・六時中、各階で椅子に座って、職員の仕事を黙って見ていた。傍に、矢部秘書課長が付き添った。どの課でも、課長の左右を、参事が撮取り囲んで居た。参事は、四・六時中することが無く、ボールペンを回していた。矢部課長に聞いて見ると「役所は民間と違って、売上実績が出ないから、仕事を遣っても、遣らなくて、給料は同じです。勤務時間、決められた部署に居れば、良いのです。年月が経てば、給料は必然的に上がっていきます。地方公務員法で決まっています。役職に就けば若干、給料は増えますが、仕事と責任は、それ以上増えます。職員は仕事を細分化して、部署を増やし、自分達の仕事を作ります。関連する事でも、分配して部署を替えます。だから町民が、役所に来ても、たらい回しにされるのです」と、言った。職員が、五・六人出て行った。「一人でも間に合いますが、五・六人で行けば、勤務評定は、五・六人必要だった事に成ります」と、秘書課長が言った。建一が以前、陳情に来た階に、担当した課長がいた。課長は「先日は失礼しました。公園緑地課の木村です。公務員の私共は、上司には逆らえません。今は、早川町長が私の上司です。何なりと、言って下さい」と、言った。建一は[この人間は、上司の顔色を見て、仕事をする人間だな。当面は使える]と、察した。四時を過ぎると、職員が帰り支度を始めた。自分の周りを整理して、職員の通用口に、向かって行った。通用口には、終業時のタイムカードを押す為に、五時前から、職員の長蛇の列が出来ていた。建一は、五時まで人間の職員に、唖然とした。以前、幸世と一緒に婚姻届出し来た時に、職員が無愛想だった事を想い起し、[なるほど]と、思った。町の職員は、コネ採用の地元出身者が大半で、中には集落の子弟も大勢いたが、不便な集落は嫌い、住まいは、便利な市内に移り
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