ありがとう!(V完結編)
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たね」と、言った。揺子は、縫いぐるみを見せ「これ、モンタの子供」と、言った。建一は幸世に霊園に勤めた経緯を聞いた。「霊園は以前、お世話になった葬儀社さんに紹介して貰った。結婚して姓が早川に変わった事を話し、事情を認識している葬儀社さんが、自宅から近く、両親や弟が埋葬されている霊園の仕事を、世話して呉れた。仕事は内勤の事務職で、人目に付きにくく、銀行の経理の経験も有るので適していた。主人(建一)も了解している事だけは、虚偽の事だった。霊園に勤めてからは、時間帯が合わなく、中々、児童養護施設には行けなくなった。在る日、施設に行っても揺子の姿が無かった。再度行っても、同様に、姿は見当たらなかった。[揺子は、善意が有る人に、貰われた]と、思った。凄く、凄く寂しかった。[これで完全に、一人ぼっちに成った]と、思った」が、幸世の話した全容だった。霊園の所長に言って、その日は早退させて貰った。事務所の外に出ると、雨はすっかり上がり、虹が掛かっていた。「綺麗ね」と、幸世が言った。それは、早川家の再出発の門出を、祝うかの様だった。建一は、総一郎に電話した。電話での総一郎は「そうか」の、つれない返事だった。自宅に戻って建一と幸世は、総一郎の部屋に入った。幸世は「心配を掛けて、すいません」と、謝った。総一郎は、近寄りがたい表情で「お帰り。幸ちゃんの家族の絆は、こんなにも希薄か」と、言った。幸世が「ごめんなさい」と、言った瞬間、総一郎は、幸世の顔を平手で殴打した。幸世が床に泣き崩れた。建一は絶句した。建一は、優しい総一郎が、手を上げたのを、始めて見た。部屋の隅にいた揺子が、小さな両手で総一郎を叩き「ママを打つ爺ちゃん、嫌い。ママ、泣いている」と、泣き叫んだ。モンタが、総一郎に飛び掛かり、引っ掻いた。揺子が部屋を出て、居間で泣き止まなかった。建一と幸世は自分達の部屋に戻った。暫くして、総一郎が二人の部屋に入って来て「ごめん、叩いて」と、謝った。幸世が「悪いのは私です。ごめんなさい」と、言った。幸世は、建一と総一郎に、信雄との過去の愛人関係、信雄が揺子の本当の父親、揺子を児童養護施設に預けたのは、揺子が自分との汚れた戸籍と決別し、新しく清い戸籍を与えたかった事、信雄に脅迫され、建一の口座から振込で金を渡していた事、葬儀社さんの紹介で霊園に勤めた事を、洗い浚い話した。建一は「俺も父ちゃんも、支店長の事は知っている。俺は、全てを了解した上で、幸ちゃんと結婚した。幸ちゃんが大好きだから。過去よりも、現在が重要だ。幸ちゃんが、久保信雄に脅されている事も判った。でも、脅されている当の本人が居ないので、警察に告発出来なかった。明日、幸ちゃんと一緒に警察に行って、久保信雄を告発する」と、言った。幸世は「有難う」と、言って、建一の手を取って泣いた。総一郎は居間に行き泣いている揺子に「ごめんね
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