ありがとう!(V完結編)
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した」と、言って、総一郎に返した。「如何して、俺に連絡して呉れなかったのですか?俺、随分探しました」と、建一は言った。総一郎が「高木さんが居なく成ってから、相当、建一は落ち込んでいた」と、言った。幸世が「御免なさい。誰からも相手にされなくて、始めは、早川さんに縋ろうと思いました。でも、早川さんの電話番号も住所も、知りません。銀行では御客様の個人情報を、自分達は見る事が出来ません。NTTの電話番号案内に問い合わせたのですが、登録が無かったです。道の駅に行けば、分かると思ったのですが、自分の様な他人が、早川さんに頼れば、迷惑が掛かると思い諦めました」と、言った。「ごめん、家には固定電話が無い。俺も父ちゃんも携帯電話だ。でも、水臭い、人の繋がりは、そんなものでは無いよ。困った時は、助け合うのが人間だ!」と、建一が言った。「その通りだ」と、総一郎が言った。幸世の目から、涙が流れた。「高木さん、今、他人と言った。他人で無くなれば良いのだ。建一と結婚しなさい。建一、嫌か?」総一郎が言った。余りに突然な発言に、建一は狼狽えた(うろたえた)が、同時に首を激しく横に振った。幸世が「お父さん、冗談はやめて下さい」と、言ったら、総一郎が「冗談で、こんな事が言えるか」と、怒鳴った。幸世が「私の様な汚れた女は、早川さんの御嫁さんには、相応しく(ふさわしく)無いです。最、素晴らしい女性は、一杯います」と、言った。総一郎が「何処が汚れているのだ。肝心は、心が綺麗な事が一番大事だ。高木さん、建一では不足か?建一の事、嫌いか?」と、言った。「好きです。以前から好きです」と、幸世は言った。総一郎が「歳を取ると、耳が遠くなって、高木さん、もう一度、言って呉れない」と、言った。幸世は少し大声で「大好きです」と、言った。「建一は?」と、総一郎が言った。「大好きだ!」と、建一は大声で叫んだ。総一郎は上機嫌で、台所から焼酎とコップを三つ持って来て「決まった、祝杯だ」と、言って、コップに焼酎を注いだ。総一郎が「一気・一気」と、叫んだので、三人で一気飲みをしたが、殆ど酒が飲めない幸世は、咽た(むせた)。建一が「父ちゃん、強引だから。大丈夫?」と、聞くと、幸世は「大丈夫。でも、本当に私で良いの?」と、聞き返した。「高木さん、無骨者ですが、宜しくお願いします」と、言って、建一は床に頭を付けた。「此方こそ、不束者ですが、宜しくお願いします」と、言って、幸世も床に頭を付けた。頭を上げた二人の顔に、笑みが毀れた(こぼれた)。総一郎が幸世に「さっき、高木さんが[お父さん]と、言って呉れた。もう一度[お父さん]て、言って、呉れないか?」と、言った。幸世が「お父さん」と、言った。「お父さん。良い響きだ」と、総一郎が満足気に言った。「モンタも祝杯だ」と、総一郎が言って、モンタを探した。モンタは、庭の墓石に合掌していた。建一は
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