ありがとう!(V完結編)
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って来て、橋に差掛ろうとした。揺子が車を避けようとした時、肌身離さず、大事にしていた猿の縫いぐるみが、弾みで、揺子の手から、増水した谷川に落ちた。縫いぐるみは、見る間に、下流に流された。それを見たモンタが、橋の上から谷川に飛び込んだ。モンタも、流れの勢いで、下流に押し流され、見えなくなった。縫いぐるみは、幸世がモンタをモデルにして、作った物だった。揺子は、泣きじゃけった。建一達は一心不乱で、モンタと縫いぐるみを、谷川に沿って探したが、見つからなかった。モンタは、二日過ぎても戻って来なかった。揺子は「モンタ、帰って来て!」と言い、泣き止まなかった。総一郎の家は、悲痛な状態が続いた。三日目の夜、居間の外側で物音がした。建一が狸の親子かなと、思って庭を見た。「揺子、揺子」と、建一が激しく叫んだ。庭にはモンタが、泥塗れで、縫いぐるみを抱き、やつれた表情で立って居た。「モンタ」全員が大声で叫んだ。モンタは揺子に抱き付き、建一に抱き付き、総一郎に抱き付いた。丸で帰宅の挨拶を、全員にハグしている様だった。大声で叫んでいるのが聞こえ、隣の滝沢家の家族が、飛び込んで来た。「モンタ、良かった、大丈夫?」と、口々に言った。まず、モンタに食い物を与えると、モンタは、余程腹が減っていたのか、ペロリと食べてっしまった。全員が、喜びの笑顔で、満開だった。全員で、泥塗れの、モンタと縫いぐるみを、風呂に入れたが、モンタは、洗い手が多すぎて、少々、迷惑がっていた。
建一達が造った餌場農場には、連日、多種多様な野生動物が来る様になり、人の気配を感じても、警戒心は殆ど無かった。そこは、健太と真喜と揺子が、野生動物と触れ合う場所でも在った。昨日は、野兎の子供が、亀に追っかけられていた。揺子は「兎さん、可哀相」と、言って、亀を蹴散らせた。鹿の家族も遣って来て、木の実などを食べていた。今日は、狐が、野鼠を捕まえに来ていたら、リスが邪魔をした。何処からともなく、夜行性のフクロウが舞い降り、野鼠を横取りした。健太が、ガマガエルを捕まえた。健太は、真喜の手に乗ったリスを、トヨ婆ちゃんが買ってくれたカメラで、写した。猿の群れが現れた。数の多さに圧倒され、三人は家の庭に逃げ帰った。午後は、庭で自転車と三輪車で遊んだ。自転車は、トヨ婆ちゃんが健太に買ったが、三輪車の二台は、建一が道の駅に行った時、粗大ごみから拾って修理した物だった。年少の真喜と揺子は、未だ、足が地面に届かないので、自転車には乗る事が出来ず、もっぱら三輪車だった。集落には子供は、健太と真喜と揺子の三人だけで、遊具は無かった。建一は庭に、ブランコと滑り台と鉄棒を造った。夏は、建一が三人を、谷川に連れて行き、水泳をした。モンタも猿泳ぎをした。冬は、庭に水を張り凍らせ、アイススケートを楽しんだ。子供達の遊び場は、全て自然界であった。三人の玩具は、総一郎の
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