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ありがとう!(V完結編)
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ヨに「子供達が大変、気に入った様で、どうか此処に、一緒に住まわせて下さい」と、頼んだ。兄妹は口を揃えて「お婆ちゃん、宜しくお願いします」と、言った。トヨは嬉しさで涙を流していた。トヨは、一人暮らしで寂しかったのだ。
親子は、市内での学校の転校など、色々な手続きを終え、一週間程で、トヨの家に引っ越して来た。健太は小学一年生で、一枝が毎日、トヨの家の軽乗用車で学校への送迎をしたが、真喜は年少で自宅にいた。果樹園は、摘花や収穫など、年に数回の仕事に限られていたが、地鶏の世話は、毎日だった。週に一度、集落の空き地で、村人達が、ゲートボールに興じる様になった。総一郎も建一もトヨも参加した。ゲートボールのボール・スティックは総一郎の木工の手作りで、ゲート・ゴールポールは建一達の手作りで、ゼッケン/ワッペンは幸世と一枝が縫った。建一は若いので、スティックを使う事が許されず、高校時代からの愛用の、黒バットで参加した。ゲートボールは、リスなどの野生動物に、競技を邪魔される事は頻繁だったが、誰も文句を言う者は無かった。昼に、幸世と一枝が、全員分のグラタンを運んで来た。総一郎が「俺は、グラタンが好きだから[昼食はグラタンが良い]と、言ったのに、如何してグラタンにしたの?」と、聞いた。幸世と一枝は、総一郎の言っている意味が、理解出来なかった。幸世が「お父さんの希望通り、グラタンですけど?」と、不信気(ふしんげ)に言った。総一郎は「これはグラタンでは、ない。グラタンは、うどんより細い麺に、ケッチャプを絡めた料理だ。こんな白く無い。もっと赤い」と、言った。幸世と一枝は、やっと解った。総一郎は、スパゲッティ―をグラタンと、勘違いをしているのだ。幸世は「お父さんの言うのは、グラタンではなく、スパゲッティ―です」と、言った。総一郎のチンプンカンプンの間違いに、全員が大爆笑した。幸世は「ごめんなさい、次は、お父さんの好きな、スパゲッティ―を作りますから」と、言った。総一郎が、バツが悪そうに照れ笑いをした。
在る日、幸世は、一枝と一緒に、ゴルフ場のクラブハウスに、野菜と果物を納めに行った。幸世は、建一が忙しい時、納品を手伝っていた。今日は、一枝に納品を覚えて貰おうと、軽トラックで一緒に行った。野菜をクラブハウスの一階の厨房に置き、二人は果物を陳列する為に、二階のレストランのフロアーに上がった。二人が陳列していると、数十人の男女の客が入って来た。客の中に、信雄と元同僚の女子行員の姿が有った。信雄の頭髪は、薄禿げに変貌していた。その日は、信雄の銀行の、大口預金者招待ゴルフだった。信雄も女子行員も、幸世に気が付き、女子行員は、ひそひそ話をしていた。幸世は咄嗟に顔を背け、一階の軽トラックに逃げ戻った。幸世は地元では、サングラスもマスクも、外していた。一番、会いたく無い人と、会ってしまった。暫くして、
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