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ありがとう!(V完結編)
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、建一に話した。「昔からだ。俺も、父ちゃんを誇りに思っている」と、言った。庭に、夜行性の狸の親子が、餌を求めて遣って来た。狸の親子は、総一郎の家には、全く警戒心が無く、夜間に、頻繁に来る様になっていた。建一と幸世とモンタは、食い物を与えた。狸の子供達が、食い物を取り合っていた。
相変わらず幸世は、居間で、電動ミシンを使って、裁縫をしていた。総一郎が覗くと、幸世は、作っている衣類を、素早く、段ボールに隠した。衣類は揺子の物だった。先日、蕎麦店で会った女の子を見てから、幸世は、揺子の衣類作りに駆られた。揺子の服は乳児服から幼児服に変わり、胸には例の如く、揺子の名前が刺繍してあった。揺子の衣類は、十数枚に及んだ。幸世は衣類を段ボールに詰め、特定郵便局から匿名で、揺子が居る児童養護施設に送った。最近、午後の長時間、幸世が家を留守にする様になった事を、建一は総一郎から聞いた。建一は不安になった。建一は、幸世に気付かれない為に、村仲間から紺色の軽トラックを借り、幸世が乗った水色の軽乗用車の後を追った。暫く走って、幸世の軽乗用車が、児童養護施設の前に停まった。庭で、施設の子供達が遊んでいた。幸世は、じっと子供達を見ていた。幸世の目は、一人の幼児を追っていた。その幼児の胸には、揺子の文字が、刺繍して有った。二時間位して子供達が、施設の中に戻って行った。幸世は、子供達が遊ぶ時間帯を、既に会得していた。揺子を見終えた幸世は、軽乗用車を始動させ、児童養護施設を後にした。途中にスーパーに立ち寄り、食料品と洗剤やトイレットペーパーなどを買った。一方、建一は、借りた紺色の軽トラックを戻しに、村人と共同作業をしている農園に向かった。そして、自分の白色の軽トラックに乗り換え、自宅に帰ったが、幸世は未だ帰っていなかった。建一は総一郎に、児童養護施設の事を話し、「暫く静観したい」と、言った。総一郎も納得した。夕方前に幸世が戻って来て「建ちゃん、今日は早いね。ごめんね、いまから夕食の支度、するから」と、言った。建一は、幸世を尾行して、児童養護施設に行った事を隠す為に「幸ちゃんと、したくて、早く帰って来た」と、冗談で答えた。幸世は「解った」と言って、微笑みながら、建一の体を軽く押し、自分達の部屋に入った。暫くして、部屋から出て来た幸世は、台所に入って夕食の準備を始めた。幸世は、自分を求めてくる建一が嬉しく、含み笑いをしていた。かつて、銀行に勤めていた幸世は、経理に明るく、集落の人達の帳簿を任される様になり、料理教室・洋裁教室の他に経理業務も増え、多忙を極めた。1
在る日の土曜日の昼頃、蕎麦店で会った、女性と幼い兄妹が、菓子折りを手にし、お金を返しに尋ねて来た。総一郎「この集落は、乗合バスも通って無いから、麓から歩いて来るのは、大変だったでしょう」と、言った。女性が「結構、距離が有りますね。午前
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