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ありがとう!(U建一の半生)
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気付いた前方の車からも、四人の若者と中年の男が降りてきた。初老の男の一人が「何だ、猿か、ビックリしたよ」と、言った。前方の車の中年の男が「最近、野生動物の出没が多くて、迷惑しています。町長に、駆除を徹底する様に、言っておきます。すいません」と、言って、初老の男達に謝っていた。別の初老の男が「俺の古いゴルフクラブが、トランクに有る。それを使って、猿を川に捨てるよ。猿を、道路上には、放置出来ないだろう」と、言って、トランクから古いゴルフクラブを取り出し、母猿を川原に押し捨てた。そして二台の車は、その場を走り去った。一部始終を目撃した建一は、川原に下りた。
子猿が、身動きしない母猿の傍に、寄り添っていた。四人の初老の男は、ゴルフ場の造成に関係する、独立行政法人の天下り役員で、前方の車の四人の若者と中年の男は、このゴルフ場を造成した、東京の大手不動産会社の社員だった。今日は、大手不動産会社の社員による、接待ゴルフの帰りだった。母猿を撥ねた後方の車の中には、クラブハウスで買ったビールの空き缶が、散らばっていた。警察の取り締まりが少ない、昼間の飲酒運転だった。少し、猿の親子を見ていた建一は、背中から籠を降ろし、母猿を籠に入れ、子猿を抱き家路に付いた。家に着いた建一は、総一郎に経緯を話し、子猿に果物を与えた。♪建一は庭に穴を掘り、母猿を埋葬し、二人は合掌した。子猿は、母猿を埋葬された箇所を、両手で躍起(やっき)に成って、掘り起こそうとしたが、建一は宥める様に、子猿を家に連れ帰った。建一は総一郎に「子猿の名前は、何にする?」と、聞いたら、「丁度、今、流れている番組の司会者の名前が良い。モンタだ」と、総一郎は言った。子猿の名前はモンタに決まった。翌朝、モンタの姿が無かった。建一は庭を見た。モンタは、母猿を掘り起こそうとして居た。母猿を慕う、モンタの仕草が、哀れだった。建一は、モンタを家に戻し、繋いだ。一週間もしないで、モンタは完全に二人に懐き、夜は交互に、二人の布団に潜り込み眠った。建一は、母猿を埋葬した場所に小さな墓石を立て、総一郎と二人で、毎日、花と果物をお供えして、母猿を弔った。二人の合掌している姿を真似て、モンタも合掌する様になった。それは、二人とモンタの日課になった。手だけ合掌しても、顔はキョロキョロ余所見しているモンタは、いじらしかった。総一郎の仕事場では、モンタの悪戯(いたずら)が絶えず、総一郎を手子摺らした。子猿が集落の話題と成り、二人の自宅には、集落の老人達が集まる様になった。次第に、総一郎の木工製品作りに、興味を持つ老人も現れた。村人の中には、木工製品の材料として、山林の間伐材を持ち込む者も居た。次第に二人の自宅は、老人達の溜まり場となり、家は手狭になった。二人は、家を増改築した。増改築の際、木登りが達者なモンタは、下で総一郎の渡した物を、梁の上の建一に
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