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ありがとう!(U建一の半生)
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繕に必要な建築資材の調達を依頼した。その日は取敢えず、集落の老人達の家を一軒ずつ回り、引越しの挨拶をした。義足の総一郎は、山道を松葉杖で歩くのはきつかったが、建一が背中に負ぶったりして、サポートした。翌朝、同僚が建築資材をトラックで運んできた。二人は同僚に「有難う」と、礼を言った。建築関係に従事していた総一郎と建一は、家の修繕など御手の門で、一日二日で瞬く(まばたく)間に完了した。翌日、集落の老人達が、野菜を持って、二人の古民家を訪れた。老人達は、修繕の出来映えの良さに驚いた。ある老人は「まるで、御殿の様だ」と、言って居た。老人達から、自分達の家の修理の依頼が、殺到する様になった。建一と総一郎は、急に忙しくなった。建築資材の調達は、塚本工務店から譲り受けた使い古した軽トラックに乗り、市内のホームセンターで購入した。限界集落で戸数も少なかったので、家屋の修理は半年も掛からなかった。修理も一段落して建一は、老人達から、野菜の作り方と、山菜の採取の方法を教わった。二人の収入源は、総一郎の木工製品の売上と、建一の野菜作りと山菜取り・キノコ取りになった。この村には、20以上の限界集落が存在した。二人が移住してから半年後、三つの町と村が統廃合して、新しい町が誕生した。この山村の村長は退職し、三つの内の一番人口が多い町長が、新しい町の町長に就任した。新町長は、40代後半の年齢で、名前を荒井と云った。就任した荒井町長は、やる気満々だった。まず、山村の高齢化・過疎化の問題に着手した。山村には富士山が一望出来る景色があり、町長は、これを生かすべきだと考えていた。彼は{富士山が一望出来る}を売りにして、ゴルフ場と高級法人ホームを誘致した。ゴルフ場は、東京の大手不動産会社が、高級法人ホームは、関西の高級法人ホームを手掛けている会社が、手を上げた。工事は始まった。ゴルフ場の大規模な造成工事により、餌場を失った野生動物が、里に出没する様になった。雨が降ると、山村の谷川は、森林の伐採による鉄砲水が生じ、環境破壊が起きた。生態系の破壊だった。荒井町長は、地元の猟友会に依頼して、野生動物の駆除を始めた。ゴルフ場と高級法人ホームに繋がる道は、従来の曲がりくねった山道のカーブは直さず、拡幅工事だけで、二車線にした。曲がりくねった山道は、拡幅工事の結果、通過する車はスピードを出し過ぎ、相当危険な道になった。8
或る日、建一が、山道脇の山林で、キノコと山菜を取っていると、二台の乗用車が、ゴルフ場から可なりのスピードで、下って来た。音前方の車から食べ物らしき物が、山林の反対側の川に投げ込まれた。子猿が、投げ込まれた物を追って、山林から走って行った。母猿が、子猿の後を追って走った。後方から来た二台目の車が母猿を撥ねた。「キャアン!」母猿の叫び声がした。後方の車から、四人の初老の男が降りてきた。音異変に
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