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ありがとう!(U建一の半生)
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丈夫で長持ちする家を造るのが、大工の使命だ]と、云う総一郎の考えに、賛同していた。久子は、コストダウンによる利益最優先主義だった。二人の考えは、水と油だった。在る日、建一は会社のガレージに居た。何時も通り、久子の赤いスポーツカーが、止まっていた。建一は、何気なく車のナンバーを見た。建一は、目を疑った。ナンバーは11-29、唖然とした。[父ちゃんの事故の対向車は、塚本久子だ]建一は確信した。設計室に戻った建一は、怒りを隠せなかったが、自らの動揺を静まらせる為に、深呼吸をして、図面に向かった。建一の背後に、久子が現れた。「こんな採算性の悪い建物の図面を書いて、何を考えているの?図面は破棄しなさい」と、久子が図面を破り言った。建一の怒りが頂点に達した。「うるさい!」と、怒鳴り、建一は椅子に座った侭で、背後の久子を、片手で振り払った。手は久子の胸に当り、仰け反って床に倒れた。立ち上った久子は「上司に向かって、セクハラ・暴言暴行です。警察に訴えます」と、言った。「お前が、親父を事故に陥れた、調本人だ」と、建一は叫んだ。久子は[自分が、事故の当事者で有る事]を既に、建一は知っていると、始めて認識した。「あれは、貴方の父親の自爆事故です。私には無関係です。濡れ衣を着せられ、迷惑だわ」と、久子は言い返した。周りの社員が、狼狽えていた。騒ぎを聞いた社長の塚本一郎が、設計室に入って来て、久子を宥めたが、久子は興奮して、一向に聴き入れなかった。久子は警察に通報した。間も無く警察官が現れ、社員に一部始終を聞き、建一は連行された。音久子は建一を解雇し、有能な弁護士を通じ、暴行罪と名誉毀損罪で、多額の損害賠償を要求した。人情家の社長・塚本一郎は、娘の久子を説得したが、久子は一歩も引かなかった。社長は総一郎の自宅を訪れ、土下座して謝り「総さん、申し訳ない。協力出来る事は、何でも言ってくれ」と、言った。建一は、又しても社会の矛盾を感じた。総一郎は、損害賠償を支払う為に、自宅を手放す決断をした。自宅は借地で、建物は廃材で造ったので、住宅の資産価値が薄れ、久子に損害賠償を支払うのが、目一杯だった。それでも、節約家である総一郎と建一には、未だ、或る程度の備蓄は、残っていた。建一は仕事を失い、二人は住む場所も失った。
建一は以前、テレビで見た、空き家で古民家の番組を思い出した。この町の周辺の山村でも、高齢化と過疎化が進み、限界集落が点在して居る事を知っていた。建一は、限界集落に移住する事を、総一郎に提案した。総一郎は「俺は、元来、町場より田舎の方が好きだ」と、言って快く承諾した。
建一と総一郎は、山村の古民家に移り住んだ。引越しには、塚本工務店が全面協力した。中に入って二人は言葉を失った。古民家は長年、空き家として放置されていたので、人が住める状態では無かった。建一は、塚本工務店の元同僚に、修
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