ありがとう!(T幸世の半生)
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対に、作って下さい。堅く、お願いします]の内容だった。深夜、幸世は、降ろした金の全額と、手紙の入った封筒を鞄に詰め、揺子の衣類など全てを、別の鞄に入れた。そして、助手席のチャイルドシートに揺子を乗せ、軽乗用車を走らせた。♪辿り着いたのは、児童養護施設だった。幸世は、児童養護施設の玄関に、ベビー籠に入れた揺子と、鞄を二つ置いた。今まで眠っていた揺子が、目を開きニッコリ笑った。幸世は、思わず、ベビー籠から揺子を取り出し、抱きしめた。「ごめんね、ごめんね」幸世の目に、大量の涙が溢れた。揺子をベビー籠に戻した。揺子は、可愛い眼差しで、じっと幸世を見詰めていた。「ごめんね」幸世は、後ろ髪を引かれる思いで、児童養護施設を後にした。
幸世はアパートに戻った。そこには、誰もいなかった。幸世は、途轍もない寂しさと、途方もない無気力に陥った。幸世は床に泣き崩れた。
音翌日、幸世は谷川の崖の上に居た。傍に、水色の軽乗用車が停まっていた。谷川は建一が住む山村で、中学時代に幸世が遠足できた所だった。車の中で幸世は、携帯電話の揺子と、モンタを抱いた建一の写真を、何回も見入っていた。目には、大粒の涙が溢れていた。幸世は車を降りた。靴を脱ぎ、バックを置いた。そして崖の上から、谷川に飛び込んだ。♪
谷川は、紅葉が真っ盛りだった。谷川の古びた吊り橋には、建一が作った母猿とモンタの口を開けた吹き流しが、秋の風に舞っていた。5
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