ありがとう!(T幸世の半生)
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ありがとう!(幸世の半生)
T{フィクションに付き、内容は架空で、
事実とは、異なる処があります}
♪玄関先で「行ってきます」と、幸世が言い、「昌五、勉強、頑張れよ」と、五郎も言った。家の中から「行ってらっしゃい、気を付けて」昌世が、返した。毎朝の高木家の、出勤時の光景だった。高木家は父・高木五郎、母・高木昌世と、長女・高木幸世、二つ年下の長男・高木昌五の、四人家族であった。父・高木五郎と長女・高木幸世は、地元の同じ地方銀行に勤めていたが、勤務先の店(支店)は違っていた。この町は県庁の所在地で、市内には同一銀行の本店が在り、支店も数多く点在していた。母の昌世は専業主婦、弟・昌五は二浪の浪人生で、地元の予備校に通っていた。父・五郎と娘・幸世の二人は、いつもの様に、自宅の近くのバス停から、バスに乗り込んだ。二人並んで吊革に?まり五郎が、幸世に言った。「今日から転勤で、店が変わった。以前、同じ店に居た部下が、俺の上司として赴任して来るから、俺は他の店に回された。部下の栄転に対しての、俺は左遷だよ」暫くして五郎は、いつもとは違うバス停で下車した。バスの窓から見る五郎の後ろ姿が、幸世には寂しく思えた。
学歴の無い五郎は主任止まりで、絶えず部下に先を越されていた。出世の道は閉ざされ、苦汁の連続だった。それは息子・昌五への、過度の進学期待願望に繋がっていた。母の昌世も、昌五に対し同様な期待を持っていた。一方、娘・幸世に対しては、五郎も昌世も[いずれは、嫁に出す]と、思い、期待は無かった。幸世は弟・昌五を、密かに自由奔放して上げたいと、思っていたが、厳しい両親の前では、口に出す事が出来なかった。幸世と昌五の姉弟は、仲が良く、常日頃、ふざけ合っていた。昌五は姉・幸世に「俺は勉強が嫌いだ。本当は大学なんか、入りたく無い。料理人に成って、店を持ちたい」と、絶えず、洩らしていた。そして、両親との会話は殆ど無く、昌五の部屋は始終、内側から鍵が掛かっており、部屋に入る事が出来るのは、幸世のみだった。部屋の中には、料理の本だけが、山積みされていた。
支店では、幸世の仕事は窓口業務だった。幸世は、持前の笑顔と優しさで、御客や同僚に接していた。それは同僚の女子行員から、ブリッ子と反感を持たれたが、男子行員からは受けが良く、御客からは好評であった。次第に幸世は、支店の看板ガールになっていった。
幸世が、支店に勤め始めてから三年が過ぎた或る日、支店長が変わった。新支店長は、氏名を久保信雄と、云い、イケメンの独身で、東京の国立大学一期校の卒業の、超エリート銀行員だった。この銀行には、東京の国立大学一期校の出身者の銀行員は、金融庁から出向した、天下りの頭取以外、一人も居なかった。彼は30歳程で、異例のスピ
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