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貴方の背中に、I LOVE YOU(中編)
貴方の背中に、I LOVE YOU(中編)
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踊り終えた二人は、床に座った。和は、首から蛍のペンダントを外し、平の首に戻した。和は手で平を後ろ向きにさせた。平の背中に、ゆっくりI LOVE YOUと、書いた。和の手が止まった。横に静かに倒れた。和は息を引き取った。天使の死に顔であった。ほんの一瞬の、幼い結婚生活であり、短い、和の一生であった。和の体の傍を見ると、一枚の紙が置いて有った。和の文字で{平と会って、一緒に居て、和は幸せでした。もう直ぐ、お父さんとお母さんの元に行くと思います。ペンダント、平のお嫁さんに掛けて上げて下さい}と、書いて有った。数時間して、平は、和の手甲に、敏郎のペンで、刺青するかの様に、平と1センチ程の文字を、彫り始めた。今度は自分の手甲にも、刺青するかの様に、和と1センチ程の文字を、彫り始めた。それは、幼い二人の絆だった。土蔵に警察官が現れ、平らに色々尋ねて帰って行った。和の遺骨は静、敏郎と共に土蔵に飾った。これで、平と心の通う人が、全て天国に行き、残ったのは黄子だけだった。平は、土蔵の屋根の隙間から、漏れる月明かりを見ていた。
数日後、黄子が激しく威嚇して吠えた。土蔵の前に良枝夫婦が立って居た。良枝夫婦は土蔵には入ろうとはせず、したすら、田村家の大きな敷地を、物色する様に見ていた。再び、黄子が吠えだした。武志は黄子を蹴散らかした。良枝が平らに「警察から頼まれた。仕方がないから、自分達の所に来なさい」と、言った。平は、即座に首を横に振った。良枝夫婦「今日は帰るから。また来るから、良く考えて置くのだよ」と、言って、その日は退散した。次の日、保健所の野犬処理班が、黄子を捕まえに来た。既に、老犬化していた黄子は、抵抗したものの簡単に捕えられ、檻に入れられてしまった。平は、野犬処理班の人間に、必死で食い下がり「人間も動物も同じ命だ!」と、何度も叫んだ。黄子を乗せた車は、無情にも、平の前から走り去って行った。平はその場に、泣き崩れた。平は、宛もなく、野犬の収容施設を探し回った。気が付くと、平は、和と初デートした公園のベンチに居た。疲れ果て、平はベンチで寝てしまった。少しして、平を揺り起こす者がいた。目を覚ますと、紺色の背広を着た、ヤクザ風の男が立って居た。男は「坊主、車に乗れ!」と、言って、道路際に停めてある、黒塗りの車を指差した。怖かった。平は指図通り、車の後部席に乗り、隣に、その男も乗り込んだ。暫く走ると、車は和風で質素な屋敷の前で、停まった。「降りろ」と、男が言った。平は、男の言うが侭に車から降り、次に男が降りた。門で若い男が二三人「兄貴(あにき)、お帰りなさい」と、出迎え頭を下げた。門の表札に、武井安造と書いて有った。座敷に上がった。平は、藁にも縋る気持ちで、男に黄子の捜索を懇願した。男は、平に名前を聞いた。「田村平」と、答えた。男は「田村?・・・母親の名前は?」と、訊ねた。「静
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