暁 〜小説投稿サイト〜
貴方の背中に、I LOVE YOU(中編)
貴方の背中に、I LOVE YOU(中編)
[3/26]

[1] [9] 最後 最初
骨壺に正式な形式で、番号と名前が貼られて居て、自筆では無かった。役人は「静さんの死因は、過労と栄養不良に縁る(よる)肺炎の併発と、ヤブ医者の死体検案書に、記載されて居ました。義衛門さんから、静さんが相続した遺産は、全て平君の名義に、移動して有ります。裁判所が決め、後見人は、弁護士に成っています。今は、後見人の弁護士が、平君の遺産を、管理しています」と、言い、弁護士の名前・住所・電話番号を明記して有る紙を、敏郎に手渡した。敏郎は「有難う御座います」と、言った。そして、役人は「では、これで失礼します」と、言って帰って行った。敏郎は弁護士の名前・住所・電話番号を、自分の手帳に、書き記し「大切に、仕舞って置きなさい」と、言って、紙を平に渡した。それから、静の骨壺を土蔵に安置した。翌日、敏郎は、自分の手帳に書留めた弁護士を尋ね、平の遺産の保全具合を、確認した。敏郎は、奇しくも、自分が考え抜いた、男子の名前と、同じで或る平に、愛着を覚え、若干、自分の子供の様な感覚に成っていた。
平が、静から受け継いだ手記を、たどたどしい平仮名で書いて居ると、和が覗いてきた。平が「見たい?」と、言ったら、和は首を縦に振った。傍に居た、敏郎が「本当に見ても良いの?」と、確認した。今度は、平が「良いよ」と、首を縦に振って言った。学校に碌に(ろくに)行って無い平は、静から教わった平仮名しか、書けなかった。手記は、既に百冊以上に達していた。敏郎は、和に解る様に、声を出して読んだ。読み終わるのに、冊数が多いので、日数を要した。読み続ける途中で、敏郎と和は、何度も称賛し続けた。敏郎が、平の手記を読み始めてから、期を同じにして、和も自分達のここ迄の道筋を、白ボードに、書いては消し、書いては消して、書き語り始めた。{自分達は、広島で被爆した。母はその時、爆死、遺体は当時の混乱で、今も行方不明、父と自分も被爆したが、生き延びた。父は顔から胸に、自分は首に、ケロイドが残った。自分は首の障害で、話す事が出来なく成った。二人は、今も白血病だ。それ以後、父に対し、周りが拒絶感を持ち、嫌がらせをする様に成り、父は頭巾を被る様に成った。父は、大学で助教授していた。この町には進駐軍の軍事施設が有ると聞き、父は、英語が堪能だったので、この町に来た。今、翻訳の仕事を、米軍は元より、出版社からも、依頼を受けている}との、内容だった。和は荷物の中から、一冊のアルバムを取り出し、両親と自分の古ぼけた集合写真を、平らに見せた。平は、以前から謎だった、敏郎の頭巾の仲の顔が写真で解り、頭巾を気にしなく成った。でも、実際に頭巾の中の実物顔と遭遇する機会は、一度も無かった。
土蔵は平穏で、敏郎は常日頃、辞書を開き、書き物をしていて、殆ど、表には出なかった。銭湯に行くのは、平と和で、二人は丸で、幼いママゴト夫婦の様だった。平が、以前、静
[1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ