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貴方の背中に、I LOVE YOU(中編)
貴方の背中に、I LOVE YOU(中編)
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子が、二人を歓迎するかの様に、尾を振り吠えていた。二人の荷物の中には、七輪(木炭コンロ)も有った。和が、手際よく、うどんを作りだした。黄子も、首を傾げ見ていた。丼ぶりに入れた、うどんには、湯気が立っていた。躊躇って(ためらって)いた平に、和が、食べる様に、手招きで促した。久しぶりの、温かい食事であった。空腹の平は、うどんを平らげるのに、時間は掛らなかった。食べ終った平らに、和が水筒を差出した。平は水を飲んだ。平は少し打ち解け、三人は談笑した。言葉の喋れない和は、小さな白ボードに書いて、談話に加わった。平には、家族は静一人だけだった。義衛門夫婦とサトの記憶は、平が赤子だったので、殆ど無かった。平は、土蔵の中の温もりを感じていたが、温もりが何か、平には、未だ解らなかった。翌朝、和が井戸端で、昨晩の丼ぶり鉢を洗っていたので、平も笑いながら、手伝った。
翌日、平と和は黄子と一緒に、手提げ袋を持ち、商店街に出掛けた。口の利けない和は、首にぶら下げた小さな白ボードに、商品名を書いたり、指で、平らに品物を指示したりして、買物をした。帰り道、幼い二人は、公園のベンチに腰掛けた。和は、手提げ袋の中から、煎餅とビスケットとジュースを、取り出した。愛くるしい目で、平らに食べる様に勧めた。平は煎餅を、和はビスケットを、口にした。食べている途中で、和は食べ掛けの煎餅とビスケットを、お互いに交換する様に、せがんだ。平と和は、煎餅とビスケットを食べ合った。平は、和の横顔を、見詰めていた。澄んだ目、透き通る様な白い肌、丸で天使の様だった。でも、肌には赤みは無く、青白かった。和が白ボードに{私の御父さんは、優しいよ。怖く無いよ。貴方の名前は?}と、書いた。平は、未だ敏郎にも和にも、自分の名前を伝えて無かった。平は和の白ボードに、自分の名前と年齢を書いた。和は驚いて{私の御父さんは、平和が一番好きだから、男が生れたら平、女が生れたら和と決めていた様よ。私は女だから、名前が和になったの。貴方と同じ歳ね}と、書き、笑った。公園の花壇が、輝いて居た。それが、幼い二人の初デートだった。土蔵に帰って、平は意を決した。平は「静が死んで、警察官が来て・・・」と、経緯を、全て敏郎に話した。敏郎は平の話を、聞き終えて頷き、明日、役所に行って来る事を約束した。翌日の朝、敏郎は役所に行って、昼頃には帰って来た。そして明日、役所の人が、静の遺骨を持って来る事を、平に伝えた。あくる日、役所の人間が、遺骨を持って土蔵に現れた。役人は「広沢敏郎さんですか?」と、聞いた。敏郎が「はい、広沢敏郎です」と、答えた。役人は骨壺を敏郎に渡した。折しも、以前、義衛門・朝子・愛犬まつが入った骨壺を届けた、同じ役人だった。当時、平は赤子だったので、その役人の記憶は全く無く、役人から、当時の経緯(いきさつ)を聞いて、初めて知った。今回は、
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