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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十七話 帝国高等弁務官
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ンラーデ侯より連絡が有りましてな」

「リヒテンラーデ侯から?」
「さよう、もうすぐ自治領主閣下から反乱軍の帝国領侵攻作戦の事を聞くことになるだろうと」

「!」
「兵力は三千万を超えるだろうと言われました。半信半疑でしたが、いや驚きました、こうも見事に当てられるとは」
レムシャイド伯はそう言うと可笑しくて堪らぬという風に笑い始めた。

俺の行動が読まれていた? どういうことだ? 同盟の出兵が決まったのは今日だ。それを既に知っていた……。馬鹿な、そんな事は無い、有り得ない。はったりか? いや、そうとは思えない、では誰が裏切った? ボルテックか? いや、一体何が起きている?

「それにしても、安心しました。今回は自治領主閣下から事前に反乱軍の動向が伺えましたからな」
レムシャイド伯の口調には柔らかな笑いが有る。しかし伯の目にある笑いは冷たい、冷笑と言って良い。

突然俺の背中に寒気が走った。俺は目の前の男を、いや帝国高等弁務官を何処かで甘く見ていなかったか? 喉がひりつくような渇きに襲われた、しかしワインを飲むのを押さえた。謝罪が先だ。

俺は出来るだけ生真面目な表情を作り、誠意を込めて話した。
「前回は大変申し訳ないことになったと思っております。しかし決して故意に知らせなかったのでは有りません。同盟が余りにも狡猾だったのです」
「……」

「これまでフェザーンが帝国の不利益になるようなことを一度でもしたことが有りましたか」
首を振りながらレムシャイド伯は答えた。

「……いや、記憶にありませんな。もちろん帝国はフェザーンの忠誠と信義に完全な信頼を寄せております。しかし……」
「?」

レムシャイド伯は思わせぶりに言葉を切り、少し笑いながら言葉を続けた
「若い者の中には過激な意見を吐くものも居るようです」
「……」

「……」
沈黙に耐え切れず問いかけた。いけないと思っても止められなかった……。
「過激な意見と言いますと?」
「……さよう、ガイエスブルク要塞をフェザーン回廊の中に運べと」

「!」
「なんとも過激な意見ですな」
レムシャイド伯が笑いながら話すが、彼の眼は笑っていなかった。

「しかし、あれはイゼルローン回廊に運ぶのでは?」
自分の声がかすれているのが分った。さり気無くワインを一口飲んだ。

ガイエスブルク要塞でイゼルローン回廊を防ぐのではないのか? いやそう見せてフェザーンに圧力をかける、同盟に出兵させるのが目的ではないのか? それがヴァレンシュタインの狙いではないのか? ヴァレンシュタインの本当の狙いはフェザーン回廊の制圧? そんな事が有るのか?

「ほう、自治領主閣下は帝国の事情に詳しいですな」
「……」
相変わらず、レムシャイド伯の笑みが絶える事は
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