深夜、猫カフェで
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していた。
あっ、あたし…、この景色を、これからもずーっと見ていくような気がする。
この景色、なんかいいなぁ…。ほっこりしてくるなぁ…。平和だなぁ…。
あたしの予感て、結構当たるのよね。
さてと、はやく寝なくちゃ。
今夜は我が家のベッドじゃないけど、ここならぐっすり眠れそうな気がする。
もんたのゴージャスな体毛から伝わる温もり。これがまた鎮静作用抜群なのだよ。
閉じた瞼がもんたの毛に隠れると、紗英はいつしか白河夜船のオールを漕ぎだした。
「おはようございます。みなさん、お時間ですよ。」
店長に起こされ、紗英が薄目を開けると、
向かいの女性客が毛布を畳んで立ち上がったところだった。
額に乗っかったもんたの前足をそっと外し、体を起こす。
「よーく眠ってましたね。」
店長が畳んだ毛布をワゴンに積み上げながら笑顔で言った。
「はい、少し休んだお陰ですっきりしました。」
「毛布はそのままで結構ですよ。」
窓の外はすっかり明るくなっている。
さあ、始発で一旦家に戻ろう。
シャワーを浴びて着替えて化粧して…。
早朝会議は8時半だからぁ…。
紗英は出勤までの手順を頭に描きつつ、毛布を畳む。
締めに、自販機の熱いコーヒーでシャキッと目を覚ます。
周囲の物音にも動じず、悠々と眠り続けるもんたをあとにして、そっと部屋を出る。
ロッカーから荷物を出していると、カウンターの奥から店長が出てきた。
「これ、ポイントカードです。3000円分のスタンプ押しときました。
ポイントが貯まると、フリータイムが一回無料になります。」
「あ、どうも。ありがとうございます。」
ポイントカードと交換に胸のストラップを返却する。
「またご来店くださいね。」
「ええ、また来ます。」
「あ、そうだ…。今度の週末、店に来て、手伝ってみます?」
「え? あ、はい! やります! やらせてください!」
「うん…。じゃあ、お待ちしてますよ。」
『キラリン キラリン』
魔法のベルに見送られ、紗英が店から出てきた。
エレベーターが1階に着き扉が開くと、両足を揃えたまま、ぽんと跳ね下りた。
通りに出て駅の方を向くと、大根を輪切りにしたような月が
駅舎の屋根に消えかかっていた。
今日もいい天気。また暑くなりそうだ。
振り返り、店の窓を見上げる。
つきみちゃんに誘われてふらっと立ち寄った深夜の猫カフェ。
偶然にしてはなんだか、運命的な出会いだった。
「こういうの、なんて言うんだっけ…。シンクロニシティ?」
ひょっしたら、ここが人生の岐路になったりして。
あの妙な予感も、なんだか現実味を帯びてきたし…。
時には気の向くまま、事の流れに身を任せるのも悪くない。
「人生、出たとこ勝負! なんちゃって。」
紗英は胸を張り、大き
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