深夜、猫カフェで
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「僕が中学2年の時、母が病気で亡くなりましてね。」
思いがけない一言に二の句が継げない。
「僕は悲しみのあまり、家に引きこもってしまったんです。
ご飯を出されても食べないでいると、つきみがみゃーみゃー鳴くんです。
ちゃんとご飯たべなさいって叱るんです。僕がご飯を口にするまで、
つきみも餌に口をつけようとはしないんですよ。
二日目にとうとうこっちが根負けです。
僕が一口食べたら安心したのか、つきみもようやく餌を食べてくれました。」
「わぁ、なんか感動。」
「その時、父が言ったんです。
つきみはママの化身に違いない。
お前を心配して、ママがつきみにのりうつったんだよ
だから、つきみをママだと思って大事にしなさいって。」
「ママの化身…。うん、そうかもしれませんね。」
フロアー内がしばらくしーんとする。
「ほら店長、また店内がしんみりしちゃったじゃないの!」
さきほどのふくよかな女性が場の空気を振り払うように明るく言った。
「店長はね、新しいお客さんが来ると必ずこの話しをするの。
そんなこと言われたら、また来ないわけにはいかないじゃないねぇ。」
紗英は店長の顔色を窺いながら、リアクションに困った。
すると店長の表情がぱっと明るくなり、
「ああ、すみませんでした。別に同情を引こうとしたわけじゃないんです。
ただ、つきみには本当に今まで助けられてばかりだったので。
なのに僕は、つきみに何も返してやれてないような…。」
「そんなことないですよ! こんなに長生きしてるってことは
健康面にずいぶん気を遣ってるんじゃありませんか?」
「ええまぁ。特にフードには気をつけてますけど。」
店長が胸を張った。
「おやつ以外は手作りのフードを与えてます。メインは肉で、
子牛、鹿肉、羊肉なんかを使います。野菜も無農薬のものだけを使ってます。」
「すごい! それじゃあ、餌代だけでも相当かかるでしょう。」
「ええ。でも、医療費にお金をかけるよりはよっぽど健全でしょ。」
「そうか、そう考えるとねぇ。でもすごい贅沢させてるんですね。」
「僕よりいいもの食べてますよ。」
「ふふ、ホントに。猫って野菜も食べるんですね。猫草は知ってるけど。
つきみちゃん、好き嫌いはないんですか?」
「ありますよ。人参だけはどんなに細かく切っても食べてくれません。
皿の脇にきれーによけてありますよ。だからわからないように
フードプロセッサーで細かく砕いて、他の食材にまぶして食べさせてます。」
「ふふふ、ひと手間ですね。つきみちゃんも、店長のそういう気遣いや手間を
ちゃんとわかってくれてるんですよ。だから、その恩返しにこんなに長生きして、
お店にも貢献してくれてるんじゃないですか。」
「そ
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