暁 〜小説投稿サイト〜
深夜、猫カフェで
深夜、猫カフェで
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初めてですが…。」
「じゃあ、システムはだいたいご存知ですね。
 うちはフリードリンク制で1時間千円からになります。
 フリータイムですと3千円、閉店までお好きなだけ猫と遊べますよ。」
「閉店まで…。それは助かります。」
「はい?」
「あ、いえ…、実は終電を逃してしまいまして…」
「あはは、この時間はそういうお客様ばかりですよ。
 では、フリータイムでよろしいですね。先払いでお願いします。
 ……はい、3千円ちょうどお預かりします。
 では、このカードを首から提げてください。」
カバンと靴はロッカーにしまい、鍵のバンドを手首にはめた。
除菌ジェルを手にすり込んだところで、
店長がカウンター横のドアをゆっくり開ける。
すると薄暗いフロアーの奥で猫たちが一斉に鳴きだした。
「どうぞお入りください。」
店長に促され紗英が覗き込むように頭から入室すると、
早速数匹の猫たちが足元に擦り寄ってきた。
なんとまあ人懐こい猫たちだろう! 
それに好みの長毛種も多い。
ざっと見渡すと、サラリーマンやOLらしき6〜7人が、
30畳ほどのフロアーのあちこちに散って座っている。
パソコン動画を猫と一緒に覗いてたり、
猫の背中を撫でながらソファで静かに読書してたり、
群れに紛れてだらーんと寝そべってたり…。
まるで我が家でくつろぐように、人と猫がまったり混和している。
(みんな『終電逃し組』かぁ。)
「どうぞ、猫たちと遊んでやってください。
 おもちゃもたくさんありますからね。」
店長が羽のついた猫じゃらしを取ってくれた。
「これが一番人気でしてね。
 そこのマットの下からチラつかせてごらんなさい。
 みんな喜んで飛びついてきますから。」
言われた通り、丸いマットの下から少しだけ羽を覗かせ、
しゅるしゅる動かしてみると、周囲にいた猫たちが一斉に群がってきた。
獲物を追うハンターの目だ。猫のこういう真剣さがまた可愛い。
羽の動きに合わせて同時に頭を振る猫たち。
その動きがあまりにもぴったりシンクロしてるので、
面白くなってついつい派手に煽ってしまう。
一匹が堪えきれず前足で飛びかかると、他の猫たちも我先にと大興奮。
「ここの子はみんな元気がいいですね。」
「そうでしょ。猫はもともと夜行性ですからね。
 深夜営業してるのも、お客さんにこういう
 野性味溢れる猫たちの姿を見せたかったからなんです。」

猫じゃらしでひとしきり遊ぶと、少々疲れた。
自販機でアイスティーをカップに落とし、
壁際のソファに座って啜っていると、10キロ以上はありそうな
巨大なラグドールがのっしのっしと近寄ってきた。
その姿はまるで、シャム猫がゴージャスな毛皮のコートを着て歩いているかのようだ。
もともと大型の猫ではあ
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