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ソードアート・オンライン〜Another story〜
マザーズ・ロザリオ編
第234話 剣の聖域
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も戦ってきた。対人戦は勿論、通常のMob、BOSSクラスも含めて、すべてを合わせれば、もう数えきれない程。その数多くの戦いの記憶の中で、紛れもなく《最強クラス》である事。
この数秒間、十数秒間、……数十秒間。最早、時の流れが正確に判らない程の濃密な空間の中で、はっきりと判った。
まだ序盤ではあるが、立ち回りや攻撃を直撃させた事実を考えれば、今のリュウキの姿は『受けて立つ』側だと言える。
「………」
だが、本人はそう言うつもりはない。そんな気の持ち様であれば、一気に傾く事は目に見えているのだ。慢心はしない。―――云わば挑戦者、その気構え。
「――滾る」
この世界での自分の身体に流れるのは、血ではなく――デジタル信号。
血管を流れる血が加速する……ではなく、デジタル信号が、身体中を巡る。巡りに巡り――最終的には、己の手に、手に収まっている剣へと集中した。
それは、ランも同じ事であり、再び場が静まり返った。
嵐の前の静けさ――とはよく言ったものだ。
周囲も理解している様で、その空気を読み――息さえも拒み――、この無音の世界の緊迫感を肌で感じていた。
「はぁッッ!!」
「ふんッ!!」
静けさは軈て嵐が吹き荒れ、雷鳴が轟くが如く、轟音へと変わった。
今度の衝突は、単発ではなく、そして 先ほどの様に、一度交わり、……止まる事はなかった。連撃に次ぐ連撃、終わりも見えない。
ただただ、轟音が 金属音……と言うより 比喩ではなく本当に雷鳴が轟いているかの様に聞こえてくるぶつかり合いだった。
雷の速度に加えて、まるで暴風雨の様な剣の連撃。我武者羅ではなく1つ1つの攻撃は狙い、読み合い、時にはカウンターを狙っている。
離れては接近し、翅を使い――上空から、本当に雷様になったかの様に、急降下し打ち込む。
激しい戦いだが――鮮やかでもあり、繊細さもある。
まるで剣における聖人の域。だからこそ、成せる業だと言えるだろう。
1人だけではない。輝きは1つではない。……揃ったからこそ、更に強く光り輝く。
それらの戦いを見て、周囲は 息を呑む――と言うよりも、正直に言えば アトラクションの類を見ているかの様に錯覚してしまっていた者達も増えてきていた。それも当然ながら無理もない事であり、如何に仮想世界とは言え、できる事とできない事は当然ながらあると言う物だ。
そんな2人の戦いを見て、『もう人間じゃないんじゃね? 新たに実装された裏ボス??』とも思い出した者達も少なからずいたのだった。
そして――2人の戦いは、通常の《DUEL》の所要時間、それを大幅に超える程の戦いを魅せ続け、……周囲を魅了し続けていた。
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